テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.12.26

ブーメラン社員急増中!辞めた社員を雇う理由

 バブル経済期までの日本企業は新卒採用・年功序列・終身雇用が大前提で、退職した社員を「裏切り者」とみなす企業も多く、一度退職すれば二度と同じ企業に就職できないという考え方が当たり前でした。

 しかし、バブル崩壊後の長引く不況下にある近年、多くの企業が大前提を保持できなくなり、退職した社員への対応にも変化が出てきています。この新しい流れを象徴するのが「出戻り社員」の急増です。

企業の期待が高まっている「出戻り社員」

 出戻り社員とは、一度退職した企業に再雇用された社員のこと。アメリカでは、投げて戻ってくる様子になぞらえて「ブーメラン社員」と呼ばれます。もともと人材の流動性が高いアメリカでは珍しくない存在でしたが、日本でも制度を整えて積極的に募集する企業が増えているのです。

 出戻り社員を求める企業は、どのような点に魅力を感じているのでしょうか。

出戻り社員を再雇用するのは、教育する時間やコストが減るため!?

 求人情報や人材紹介のサービスを手掛けるエンジャパンの調査によると、一度退職した社員を再雇用したことがある企業は全体の67%。すでに過半数の企業が出戻り社員を迎えています。

 最大のメリットは即戦力になること。即戦力といえば中途採用社員も優れたスキルを身につけていることが多いですが、出戻り社員はスキルだけでなくその企業のシステムややり方にも通じているので、教育する時間やコストが大幅に抑えられます。

 出戻り社員の年齢と性別では、30代の男性が46%と最も多く、次いで40代の男性が36%。女性では30代の割合が15%と最も多く、中心はバリバリ働ける年代です。この点からも、企業はすぐに活躍してくれる人材を求めていることがわかります。

「戻ってきたくなるほどよい企業である」と伝えられる

 また、出戻り社員は人となりがわかっているのもメリットです。ほとんどの企業は採用時に面接を行いますが、やはり短時間で把握できる性格や考え方には限界があります。これに対して出戻り社員はすでに一度採用されて働いており、どんな人物かわかっているので安心なのです。

 しかも出戻り社員は他社を見ることで視野が広がり、出戻りした企業のよさを改めて認識しています。この結果として「戻ってきたくなるほどよい企業である」と周囲に伝えられるのも、企業にとってプラスになります。

 近年は人口減少による人材不足も問題になっており、メリットが多い出戻り社員に対する企業の期待は大きくなっています。「ジョブリターン」や「キャリアリターン」などの名称で、一度退職した社員の再雇用制度を整える大手企業も増加中。ネット広告を手掛けるファンコミュニケーションズは、「出戻りさんいらっしゃい!」と銘打った再入社社員インタビューを自社サイトに掲載して、出戻り社員を歓迎する社風をアピールしています。

誰でも出戻りできるわけではない

 企業にとってメリットが多い出戻り社員ですが、もちろん誰でも受け入れられるわけではありません。企業と喧嘩別れしたり、競合他社への転職を隠したりといった印象の悪い退職をした場合は出戻りがかなり難しくなります。

 このほかにも、退職前にしっかりした実績をあげられたか、転職先でも実績を残して自分の市場価値を高められたかなど、出戻りには越えなければならないハードルが存在します。仕事に対する意識の高さは、どこに行っても忘れないようにしましょう。

 出戻りを果たしやすくするためには、退職後も元上司や元同僚と連絡を取り合って関係を保つことが効果的です。SNSを活用してつながり続けるのもよいでしょう。こまめに連絡を取っていれば、戻りたいときにすぐ相談できます。元上司から復帰を打診されることも珍しくありません。

 思い切って転職しても、うまくいかないことはよくあります。出戻りはそんなときの心強い保険になるでしょう。その道を自分から閉ざしてしまわないためにも、現在の職場とは円満な関係を保つ心構えが大切です。

<参考サイト>
・出戻り社員(再雇用)について エンジャパン
http://partners.en-japan.com/enquetereport/108/
・出戻りさんいらっしゃい ファンコミュニケーションズ企業サイト
https://www.fancs.com/saiyou/demodori
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長