テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.04.14

新しい視力回復「眼内コンタクトレンズ」とは?

 視力の低下は、老化や目の酷使、生活スタイルなどが原因としてあげられていますが、一度悪くなってしまった視力を自然な力で元に戻すことは、かなり困難なこととして認知されています。

 視力を回復するためには、物理的に手術をする手段が最も近道といわれますが、視力矯正手術と聞くと、「安全性は?」「後遺症は?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。 一昔前には「レーシック」という手術法が流行しましたが、現在は「ICL」と呼ばれる視力矯正手術が注目されています。今回は、視力矯正手術についてのお話です。

目の中にレンズを入れるICL手術とは?

 ICLとは、「眼内コンタクトレンズ」を意味する、「Implantable Contact Lens」の頭文字を取った言葉で、その名前の通り、目の内に小さなレンズを入れることで視力を矯正する治療法です。2010年に厚生労働省が認可している技術ですが、2018年3月にアイドルグループ・HKT48の指原莉乃さんがこの手術を受けたことで、改めて話題になっています。

 具体的にICLの手術方法は、次のようなものになります。まず点眼麻酔をした後、角膜の縁を3ミリほど切開します。眼の茶色い部分(紅彩)と水晶体の間に、折りたたんだソフトコンタクトレンズのような薄い眼内レンズを挿入します。レンズは目の中で広がり、常に目の中にコンタクトレンズを入れているような状態となるのです。手術時間は両目で15分ほどで、日帰りでの施術が可能です。

レーシック手術とは何が違う?

 先述したように、視力を矯正する手術のひとつとしてはレーシックが有名ですが、ICLとは全くの別物です。目の内にレンズを入れるICLに対して、レーシックの場合は、目に入ってくる光線を屈曲させる「角膜」という部分を削り、屈折力を調整することで視力を矯正するというものです。こちらも、サッカーの本田圭佑選手や、元メジャーリーガーの黒田博樹さんなどが手術を受けたことが報道され、一般的にも広まりました。

 しかし、レーシック手術が流行した後、ドライアイや視力低下などの後遺症に悩まされる患者さんが増えたことも記憶に新しいかと思います。レーシックは角膜を削ってしまうため、手術が不適応となってしまった場合に瞳を元の状態に戻すことが難しく、こうした患者さんは「レーシック難民」と呼ばれ、問題にもなっています。

レーシックよりも安全?ICLのメリットは?

 ではICLはどうでしょうか? ICLの場合にも、眼圧を高めてしまったり、白内障のリスクが問題として指摘されていました。しかし、少しずつ技術は進歩し、現在使用される眼内レンズはより安全で、海外では術後7年間で、施術が原因とみられる白内障を発症した例はないそうです。

 とはいえ、強い衝撃などでレンズがずれて再度手術が必要になる可能性も否定できませんし、感染症・合併症になったりする可能性もゼロではありません。しかし、レーシックと大きく異なるのは、目の中にレンズが入っているため、不都合が起きた場合にはレンズを取り出し、瞳を元の状態に戻すことができます。加齢による白内障を発症した場合も、白内障手術を受け、改めてレンズを目に移植するという方法が可能なのです。現在は老眼に対応するレンズはないそうですが、ゆくゆくはそうした技術も発展していくかもしれませんね。

 また、レーシックでは治療することができなかった強度の近視にも対応できることも利点のひとつとして挙げられています。角膜を削るには限界があるため、強度の近視の場合、レーシック治療は難しかったのです。一方、ICLの場合は瞳の中に入れるレンズの度数を決められるため、こうした需要にも応えることができるといいます。

レーシックよりも高価格なICLの施術費

 ICLとレーシックはいずれも保険外診療のため、治療費・手術費は高額となります。平均的に、ICLは両目で60万円~70万円、レーシックは20万円~40万円といった価格帯。ICLの方が20万円ほど高額に設定されていますが、それだけ高度な技術を必要とするライセンス制をとっているからです。

 強度近視の目の見え方を例えるなら、「水中で目を開けているような感じ」でしょうか。目は、情報がダイレクトに取り込まれる脳の窓のようなものです。いくら眼鏡で矯正が利くとはいえ、強度の近視、乱視となると眼鏡がなければ生活が非常に困難になります。

 視力が元に戻るなら、眼鏡やコンタクトの煩わしさから解放されるならと、さまざまな方法を調べていらっしゃる方も多いかと思います。とはいえ、ICLも目にメスを入れ、人工異物を入れるという事には変わりません。メリット、デメリットをよく調べた上で、専門のクリニックなどで一度相談をしてみてはいかがでしょうか。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長