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DATE/ 2019.03.13

WHOが定めた音楽の音量基準はどれくらい?

 デジタルオーディオプレーヤーだけでなくスマホでも音楽が聴けるようになり、街中や電車ではイヤホンをしている人をよく見かけますよね。しかし、イヤホンで音楽を聞くときについつい音量を大きくしてはいませんか? 心当たりがある方はその習慣を見直さなければ、将来難聴になってしまうかもしれません。

なぜ難聴になってしまうのか

 ライブハウスや競技場など絶えず大きな音が流れている空間にいたあとで、音が聞こえにくくなったり耳が痛くなった経験はありませんか? この症状は大音量にさらされたことで耳の中の細胞がダメージを受けてしまう「音響外傷」によるもので、ほとんどはほどなく消える症状だとされています。しかし最近では、若い人を中心にこの症状が翌日以降も消えずに難聴になるケースが増えているのです。

 その理由は、音響外傷はヘッドホンやイヤホンの利用でも引き起こされるものだから。街中で音楽を聞くときにはついつい音量を上げすぎてしまいますが、それが耳にダメージを与える原因となってしまうのです。また、音量を大きくしていなくてもゲームや動画の視聴などで、ヘッドホンやイヤホンを長時間利用してしまうことも。これも同じく音響外傷の原因になってしまうので注意が必要です。

 厄介なことに音響外傷はいつのまにか進行しているので発見が遅れやすく、会話が聞こえづらくなってから、ようやく難聴に気づくケースが多いといいます。しかし、音響外傷は耳の中の細胞が傷つけられて起こるもので、現在は効果的な治療法がありません。一度難聴になってしまうと治らないといわれていて、予防が重要だとされているのです。

WHOが提言する国際基準とは

 実際、12~35歳の人口の約半分にあたる11億人が難聴になるリスクにさらされていることがわかっています。そこで2019年2月、WHOは国際電気通信連合(ITU)とともに音楽再生機器の国際基準を策定、発表しました。

 その発表によると「大人は80デシベルの音量で週40時間まで、子どもは75デシベルの音量で週40時間まで」が安全に使用する限度だとされています。一般的な会話は60デシベル程度、電車が通るガードレールの下は100デシベルといわれていて、その間の80デシベルは地下鉄の車内の音くらいの大きさが目安になります。ヘッドホンやイヤホンをつけるときには装着したまま話ができる程度が望ましいとされています。

 この基準を発表したWHOは、携帯できる音楽機器に音量制限をつける、利用者がどれくらいの時間、音楽を聞いているかが分かるような機能をつけるといった対策を進めるよう求めています。この要請を受けて企業はどんな反応を見せるのか、その対応が迫られています。

誰にとっても他人事ではない難聴リスク

 もし耳鳴りが続く、耳がつまった感じがするときにはすぐに病院へ行きましょう。難聴が進行する前に症状を自覚することで、それ以上の悪化を防ぐことができるかもしれません。
 現在では誰にとっても難聴のリスクは他人事ではない状況になっています。一度なると治らないといわれる難聴、そうならないためにも耳を酷使しすぎず、適度に耳も休めることが大切です。

<参考サイト>
・若者11億人に難聴リスク WHOが音楽機器使用に基準
https://www.asahi.com/articles/ASM2F2FCBM2FUHBI008.html
・難聴リスク、若者の耳に迫る 大音量ライブやイヤホン
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO14882760U7A400C1NZBP00?channel=DF140920160921
・若い人にも多い難聴3 音響外傷(ヘッドホン難聴)
http://www.ohkawara-clinic.com/column/nancho4.html
・千葉県医師会 広報誌「ミレニアム」
https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium55_10-12.pdf
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