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DATE/ 2019.06.16

海外から見た日本の「長所」と「短所」は?

 日本で生まれ、日本で暮らしている私たちにとって日本を語ることは意外と難しいものです。まさに灯台下暗し。何事も身近すぎるとかえって分かりにくくなります。

 そんなとき頼りになるのが第三者からの視点と意見です。日本の「長所」「短所」とは何か。海外から客観的に見た日本の感想を取りまとめました。

日本は安全なのか

 日本の長所として「治安がいい」「街がきれい」を挙げる人は少なくありません。国土交通省の「訪日旅行のブランド・イメージに関する調査研究」、同じく国土交通省の「地域のモビリティ確保の知恵袋2017~訪日外国人旅行者の地方誘客を支える交通施策~」でも、やはりこの2つは外国人から見た日本の魅力として取り上げられています。

 これらの資料からは、外国人が「日本の自然や風景」にも高い関心を持っていることもわかります。花見、紅葉、雪景色を日本の美と捉えて賞賛しています。要するに「四季の日本」ですね。

 日本の自然を賞賛する一方で、地震や津波など自然災害を警戒する人もたくさんいます。特に世界中で大きく報道された2011年の東日本大震災以降、その傾向が高くなっているようです。身の危険という意味で、治安の良さと災害の危険を対比的な関係をなしています。

短所をあえて持ち出す戦略 

 海外展開に積極的な日本企業の良品計画は観光キャンペーンにあえて「防災」を持ち出しています。2019年4月にオープンした「MUJI HOTEL 銀座」では、宿泊者に対しウェルカムグッズとして、お守り型の袋に防災MAPなどを収めた「もしものお守り」を配布しています。

 そこには「四方を海に囲まれたこの国で、わたしたちは、豊かな自然の恩恵を受けながら、同時に自然を畏怖してきました。ふだんから「もしも」に備える習慣は、日本の風土の中で培われてきた知恵です。どうか安全で、心地よい旅になりますように」と記されています。

 「短所」と思われていることを隠さずにあえて持ち出しているのが驚きです。このようにして誠意を伝え、ブランドイメージの向上につなげることがひとつの狙いなのでしょう。

日本で「働くこと」の短所

 上記資料「地域のモビリティ確保の知恵袋2017」のタイ人を対象にしたインタビューでは「治安が良く、街がきれい」「人々が親切で、色々と助けてくれる」「日本人の質の高い暮らしやファッションへの憧れもある」「サービスレベルの高さ(デパートの受付、販売員の対応など)や、治安の良さも魅力である」といった回答が見られました。

 ここまで「観光」という観点からお伝えしてきましたが、すこし見方を変えて「労働」という観点にも踏み込んでディスカバリー・ジャパンしてみましょう。日本で暮らすことに憧れを抱いている外国人は世界中にたくさんいます。実際にも日本国際化推進協会のアンケートによると、日本に「住むこと」に魅力を感じている人は8割に達しました。

 しかし一方で、日本で「働くこと」に魅力を感じている人がたったの2割強という結果になりました。これは由々しき問題です。日本で労働経験のある外国人は「長時間労働」や「外国人差別」、「変化を嫌う日本企業の体質」にネガティブな印象を持っています。

 日本の労働は外国人労働者抜きでは成り立ちません。外国人が感じている日本で「働くこと」の短所は、日本人が感じていることでもあります。「働き方改革」と「外国人労働者の受け入れ拡大」は安倍内閣のビッグトピックです。

 「外国人労働者の受け入れ拡大」によって「治安」を懸念する人もいます。「観光」と「労働」は決して別々の問題ではないのです。日本をより魅力的で、住みやすい国にしていくうえで、外国人などの少数者の視点から日本の長所と短所を発見し、検討していくことがどうしても欠かせません。

<参考サイト>
・国土交通省「訪日旅行のブランド・イメージに関する調査研究」
http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk126.pdf
・国土交通省「地域のモビリティ確保の知恵袋2017~訪日外国人旅行者の地方誘客を支える交通施策~」
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/sogoseisaku_soukou_tk_000042.html
・日本国際化推進協会「日本で働くことについての調査」
http://japi0808.sakura.ne.jp/job.pdf
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