テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.12.01

今さら聞けない!キャッシュレス還元制度

 2019年10月から、キャッシュレスで支払いをすると一部の店舗ではポイントがもらえるようになりました。なんとなく知っているけれど、詳しいところはよくわからないという人もいるかも知れません。ここで何がどうお得なのか確認しておきましょう。

ポイント還元は2020年6月まで

 キャッシュレス・消費者還元事業は、2019年10月1日の消費税引き上げにあわせてはじまりました。ただし、2019年10月から2020年6月(9ヶ月間)の期間限定です。還元率は5%と2%の場合があり、店舗により異なります。5%還元されるのは、中小企業(地域の八百屋さんや書店など)。2%の還元率はコンビニ、ガソリンスタンドなどのフランチャイズチェーンとなっています。また、スーパーは日常的によく使う、という人も多いかと思いますが、大手(マックスバリュ、ダイエー、西友、マルエツなど)は還元対象外です。またネットショップ(ECサイト)でも、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどに出店している店舗の一部ではポイント還元されるところもあります。このあたりはサイト内の表記をよく確認しましょう。

電子マネーやQRコード決済なども対象

 決済方法は、まずはクレジットカードが挙げられます。なお、所持しているクレジットカードが対象かどうかは、経済産業省の専用サイト(登録されているクレジットカードサービスを探す)で、手持ちのクレジットカード番号の先頭6桁を入力して確認できます。クレジットカード以外では、デビットカード、電子マネー(PASMO、SUIKA、ICOCA、nanaco、WAON、Edyなど)や、最近話題のQRコード決済(PayPay、楽天ペイ、LINE Payなど)も対応しています。

 還元方法は、支払に使用したサービス会社によります。たとえば、セゾンカードで支払った場合、利用月の翌々月請求時に自動的に引落相殺されます。一方オリコカードの場合、まずは自分でWEBサイトに会員登録する必要があります。その後、利用月の翌々月にオリコポイントとして還元されます。PayPayだと、翌月20日前後にPayPayボーナスとして還元され、楽天ペイなら、利用月の翌々月末に楽天スーパーポイントの通常ポイントとして還元される、といった感じです。

 また、交通系ICカードでも、事前によく確認が必要です。たとえば、PASMOの場合、事前にWEBサイトに登録が必要です。ポイントは1月、4月、7月に還元されますが、指定された場所へ行き、PASMOにチャージする必要があります。また、それぞれに上限があります。たとえば、nanacoポイントの場合一度にチャージできるポイントは50,000円まで。PayPayの場合は、毎月25,000ポイントまで、楽天ペイなら決済ごとに25,000ポイントまで、などとなっています。この上限額や上限設定方法は会社ごとにさまざまです。

 ポイント還元を受けるためには、利用する方法や会社によっては事前登録するなど、自分からアクションを起こさなければならない場合があったり、利用するサービスによって上限が全く異なったりします。このあたりはやや混乱しますが、よく使う手段に関してはしっかり確認しておきましょう。

軽減税率とはどう違うのか?

 今回の消費税に関する施策では、「軽減税率」もあります。「軽減税率」と「キャッシュレスポイント還元」は一見似ているように思えますが、全く異なります。「軽減税率」とは、「酒・外食以外の飲食料品」と「新聞」(定期購読のみ)の大きく2種類に関しては、生活必需品という理由から、消費税8%となる制度のことです。たとえば、「酒・外食以外の飲食料品」を「ポイント還元」の対象店舗で、対象の支払い方法で支払えば、消費税は8%となり、かつポイント還元を受けることができます。つまり、「軽減税率」は購入する品目や対象によって税金が2%減額されます。一方、「ポイント還元」は対応した店舗において、キャッシュレス決済を行うことで受けられるものです。

実際にどのくらいお得なのか?

 ポイント還元がどのくらいお得なのか、試算してみましょう。たとえば、仮にコンビニで毎日500円使っていると仮定した場合、一月では15,000円になります。ポイント還元はコンビニの場合2%です。つまり、この消費のみから受け取るポイント還元額は毎月300円。5%還元のお店、たとえば、地域のお店や、ネットショップで50,000円分の商品(例えば中古PCなど)を買ったと想定してみましょう。この場合ポイント還元額は2,500円となります。

 日常の生活における消費を全てポイント5%還元のお店で賄えば、もっと多い金額のポイント還元を受けることができるかもしれまません。ただし、大手スーパーはポイント還元対象外なので、地域の商店やネットショップに消費を切り替える必要はあります。また、外食に関しても現金決済のみの店舗がまだまだ多い印象です。キャッシュレス決済はお金が入るまでにタイムラグが生じるので、中小規模の事業者にはリスクなのかも知れません。

 こういった事業者に対してキャッシュレス決済を推し進めるため、国は決済用端末の費用を負担したり、決済手数料の3分の1を負担したりしています。つまり現段階では、消費税増税による消費者の生活のサポートという側面よりも、地域の商店などがキャッシュレス決済に移行することを進める段階と捉えてもいいでしょう。

ちょっと分かりにくいか

 あらゆるキャッシュレス決済に対応している点では、行き届いた仕組みかもしれません。ただし現状では、ポイント還元の方法や上限などがバラバラすぎて分かりにくいことは否めません。今後ポイント還元策のお得さをよりアピールするには、もう一歩統一された分かりやすい制度の整備が必要な気もします。

<参考サイト>
・キャッシュレス・ポイント還元事業 消費者向け説明資料 2019年10月|経済産業省
https://cashless.go.jp/assets/doc/consumer_introduction.pdf
・登録されているクレジットカードサービスを探す|経済産業省
https://business.cashless.go.jp/cardcheck/input
・キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)概要|経済産業省
https://cashless.go.jp/assets/doc/kameiten_setsumeikai_shiryou.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長