テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.02.05

あの企業が展開している意外なビジネスとは?

 ミスタードーナツを運営しているのは掃除用具レンタルで知られるダスキン。これは比較的知られているかもしれません。一方、音響機器のオーディオテクニカがすしロボットを作っていると聞くとどうでしょう。また、精密機器メーカーの富士フイルムは化粧品を製造販売しています。いずれもちょっと意外な組み合わせという感じがします。ここではこの3社について、どうしてそうなったのかという点に注目しながら、少し詳しくみてみましょう。

なぜダスキンはミスド事業を始めたのか

 ダスキンがミスタードーナツ・オブ・アメリカと事業提携契約を行ったのは1970年。翌年に第1号店をオープンします。ダスキン創業者の鈴木清一氏は、当時日本では普及していなかったフランチャイズビジネスに興味を持ち、アメリカに渡ってミスタードーナツの創始者に出会います。ここから日本でのミスドがスタートします。今でこそコンビニを始めとして、フランチャイズビジネスはかなり広がっていますが、当時、斬新な手法としてこのビジネスモデルを日本に取り入れて一気に展開したのがミスタードーナツでした。経営の手法としてフランチャイズをいち早く取り入れ、日本で展開させたのがダスキンです。ダスキンは現在では、清掃関連サービスにとどまらず、オフィスへのドリンクサービスや家事代行サービス、自然派化粧品・健康食品の販売などさまざまな新しい分野に進出しています。

オーディオテクニカのすしロボット

 オーディオテクニカと聞けば、その会社名からしてまず思い浮かべるのは、もちろんオーディオ機器です。しかし、実は世界すしロボットを開発・販売しています。しかもシェアは世界2位。音響機器でも評判のいい会社ですが、すしロボットの世界でもトップクラスです。このすしロボットはスーパーや宅配寿司、回転寿司などで用いられ、すでに30年もの歴史があるとのことです。1980年代前半に、CDが発売されたことにより、オーディオ業界でアナログからデジタルへの変化が起こります。この危機感から新事業の模索が始まり、「シャリ玉成形機(すしロボット)」が開発されたとのこと。現在では海外での日本食ブームに乗って世界約50カ国で使われています。

富士フイルムの化粧品

 富士フイルムはフジカラーで知られた写真フィルムの会社です。使い捨てカメラ「写ルンです」は1980年代後半から大ヒット商品となりました。現在でも同社のカメラには手堅い人気があります。一方で、化粧品「アスタリフト」シリーズやヘルスケア商品などもヒットしています。富士フイルムは、写真フィルムの薄い膜の内部に微粒子を安定的に配置する技術「ナノテクノロジー」を開発しました。この写真フィルムの厚みは人の肌の角質とほぼ同じ厚み。また、写真のフィルムは「コラーゲン」を主成分としています。人の肌にとって「コラーゲン」がとても重要であることは誰もが知るところでしょう。つまり、写真フィルムを高精細に表現するための技術は、ひとの肌の健康に応用されています。

 こういった事業開発の背景には、カメラがフィルムからデジタルへと変化する流れがあります。また、医療用医薬品を展開する企業を買収し、バイオ医薬分野の会社を設立するなど、医学分野への展開を進めると同時に、内視鏡やX線画像診断装置といった旧来の映像技術に関連する分野も継続的に発展させています。同社は今後こういった「予防・診断・治療」までを含めたトータルヘルスケアカンパニーを目指していくとしています。

共通点は手元の技術の先への模索かもしれない

 どこも思い切った分野に手を伸ばして多角化しています。共通点としては、どの企業も業界に変化の兆しが見えた段階で新たな事業を展開している点ではないでしょうか。ダスキンが本業以外に手を広げたのは高度経済成長が終わる1970年代初頭、オーディオテクニカはCDが出回りだしてすぐに、富士フイルムもキャノンとニコンがフィルム式カメラから撤退する年には、化粧品を売り出しています。

 もちろん、成功はしていなくとも、これまでにもたくさんの企業がさまざまなチャレンジをしてきたことでしょう。専門家の分析記事を読むと、経営の多角化は一筋縄でいかないようです。少なくとも、自社の持つ技術とは全く異なる業種を買収してうまくいった事例は少ないようです。しかし、自社の技術に固執していても世の変化から置いていかれます。成功している企業で言えることは、現段階でうまくいっている物事の先を見て、次に何をするか、常に次を模索するということなのかもしれません。

<参考サイト>
・ミスタードーナツの歴史│ミスタードーナツ
https://www.misterdonut.jp/museum/history/
・【あの有名企業の異分野進出】音響メーカーのオーディオテクニカが「寿司」で成功した理由|リクナビNEXTジャーナル
https://next.rikunabi.com/journal/20150109/
・富士フイルムについて> 事業領域> ヘルスケア│富士フイルム
https://www.fujifilm.co.jp/corporate/aboutus/solution/healthcare/index.html
・「本業消滅」を乗り越えた企業の"重要な共通点"|東洋経済ONLINE
https://toyokeizai.net/articles/-/291305
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長