テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.04.11

日本で働く外国人の「不満」ランキング

 総合人材サービスのパーソル総合研究所が発表した「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」の結果によると、【日本で働く外国人の「不満」ランキング】トップ10は、<正社員>と<パート・アルバイト>別で、以下のようになっています。

 【日本で働く外国人の「不満」ランキング】トップ10
<正社員>
1位 昇進・昇格が遅い 28.6%
2位 給料が上がらない 28.2%
3位 給料が安い 25.6%
4位 明確なキャリアパスがない 23.8%
5位 無駄な会議が多い 20.8%
6位 残業が多い 19.0%
7位 評価の基準が明確でない 18.2%
8位 組織、上司の意思決定のプロセスがわかりにくい 18.0%
9位 行うべき業務の範囲が明確に定まっていない 17.8%
10位 組織、上司の意思決定が遅い 16.4%
10位 技能・スキルが伸びる仕事ができない 16.4%

<パート・アルバイト>
1位 給料が上がらない 15.4%
2位 異文化習慣を理解してもらえない 15.2%
3位 明確なキャリアパスがない 15.0%
4位 給料が安い 14.4%
5位 自己裁量が少ない 14.0%
6位 研修の機会が少ない 13.2%
7位 時間に厳しい 12.4%
8位 昇進・昇格が遅い 11.8%
9位 技能・スキルが伸びる仕事ができない 11.2%
10位 顧客の要求レベルが高すぎる 10.8%
※<正社員>n=500、<パート・アルバイト>n=500

日本で働く外国人“特有”の「不満」とは?

 さらに、<正社員>と<パート・アルバイト>をまとめた<全体>での【日本で働く外国人の「不満」ランキング】トップ10は、以下のようになっています。

 【日本で働く外国人の「不満」ランキング】トップ10
<全体>
1位 給料が上がらない 21.8%
2位 昇進・昇格が遅い 20.2%
3位 給料が安い 20.0%
4位 明確なキャリアパスがない 19.4%
5位 自己裁量が少ない 14.8%
6位 研修の機会が少ない 14.2%
7位 異文化習慣を理解してもらえない 14.2%
8位 評価の基準が明確でない 14.0%
9位 技能・スキルが伸びる仕事ができない 13.8%
10位 組織、上司の意思決定が遅い 13.0%
※<全体>n=1000

 この結果のうち、日本で働く外国人の「不満」トップ3の「給料が上がらない」「昇進・昇格が遅い」「給料が安い」といった、いわゆる収入や待遇に直結する不満は働く日本人とも共通していそうですが、4位以降では日本企業の雇用のゆがみや、世界基準まで達していない未熟な点がうかがえてきます。

日本で働く外国人と日本の企業意識ギャップ

 さらに、日本企業の雇用のゆがみは、働く当事者間のゆがみをもはらんでいます。【日本で働く外国人の「不満」ランキング】<全体>のうち、トップ5の項目別に【外国人が感じている「不満」の割合と、企業が認識している割合のギャップ】をみると、以下のようになっています。

 【外国人が感じている「不満」の割合と、企業が認識している割合のギャップ】
1位 給料が上がらない <企業意識>4.1% <外国人材本人の意識>21.8%
2位 昇進・昇格が遅い <企業意識>3.5% <外国人材本人の意識>20.2%
3位 給料が安い <企業意識>5.5% <外国人材本人の意識>19.4%
4位 明確なキャリアパスがない <企業意識>8.3% <外国人材本人の意識>20.0%
5位 自己裁量が少ない <企業意識>4.4% <外国人材本人の意識>14.8%
※<企業意識>(正社員、パート・アルバイト雇用企業の平均値)536、<外国人材本人の意識>1000

 例えば、一番ギャップの大きい2位「昇進・昇格が遅い」では、<外国人材本人の意識>が20.2%に対し、<企業意識>つまり企業が認識している割合は3.5%と少なく、5倍以上ものギャップがあるという結果がでています。

日本で働く外国人の「孤独感」ランキング

 他方、日本で働く外国人の「孤独感」も大きな課題となっていますが、その結果が以下に表れています。

 【日本で働く外国人の孤独感】<全体>のトップ5順
1)私のことを、本当によくわかってくれる人はいない
<全体>24.3% <正社員>28.6% <パート・アルバイト>20.0%
2)私は、孤立しているように思う
<全体>22.1% <正社員>32.6% <パート・アルバイト>11.6%
3)私には仲間がいない
<全体>20.0% <正社員>25.8% <パート・アルバイト>14.2%
4)私には、頼りにできる人がいない
<全体>19.8% <正社員>27.2% <パート・アルバイト>12.4%
5)私は、だれからも無視されているように思う
<全体>18.0% <正社員>25.4% <パート・アルバイト>10.6%

 特に、<正社員>に孤独を感じている傾向がみられます。2)「私は、孤立しているように思う」は30%を超えていますし、他の項目においてもすべて20%代の後半という、全体に高い割合を示しています。

 孤独感が強い層は、仕事のパフォーマンスや会社満足度は低くなり、転職意向は高くなる傾向にあるとされています。

日本で働くビジネスパーソンの「不満」解消へ

 パーソル総合研究所・主任研究員の小林祐児氏は、「日本人に最適化されてきたこれまでの日本企業の雇用のあり方、マネジメントの方法では、外国人にフィットしていないということだ。その結果、多くの不満を外国人は抱えるものの、職場にはそれを伝える相手も少なく、孤独感を深めていることが浮き彫りになった」と、問題点を整理しています。

 そして、解決へのための提案として「多くの企業は、外国人に対して“特別なことはしていない”と言うが、現在の外国人を受け入れるフェーズにおいては、それは“放置”に等しい。企業としては、外国人本人はもちろん、受け入れる日本人に対する支援も充実させることが望まれる」としています。

 ビジネスパーソンの「不満」はたとえ最初はささやかなものであったとしても、放置しておけばやがて大きな問題となり、ひいてはビジネスで関わるすべての人々のやっかいな課題へとつながっていきかねません。一人ひとりのビジネスパーソンの「不満」が解消され、日本がどんな人にとっても真に働きやすい場所となるよう、迅速かつ組織的で個々に適した対応が求められます。

<参考サイト>
・パーソル総合研究所、日本で働く外国人の意識に関する調査結果を発表
外国人への日本人のマネジメントに問題があることが明らかに
https://rc.persol-group.co.jp/news/202002260001.html
・日本で働く外国人材の就業実態・意識調査 結果報告書
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/surveyofForeigners_3.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長