社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「ガッツ」があった軍人・なかった軍人
上智大学名誉教授の渡部昇一氏は、今の教育は「頭が良くなること」「やさしく情があること」の大切さは教えているが、武士の世界で最も大切だった「ガッツ」の重要性を教えていない、と語る。
渡部氏は、ガッツがあった軍人として、陸軍大臣:木越安綱(きごしやすつな)を、ガッツがなかった軍人として、連合艦隊司令長官:山本五十六の名前を挙げている。
軍備拡張をめぐる政治問題で内閣が潰れた際、「軍部が内閣を潰せるようなことでいいのか?戦争をするかどうかを決めるのは政治であり、軍隊ではない」と考え、陸軍部内の反対を押し切って、「陸海軍大臣は現役の大将と中将に限る」という規定を削除したのだ。
これにより木越は徹底的に陸軍内部から憎まれ、その後、昇進することはなかったが、渡部氏はこの木越の行動を大正デモクラシーの基盤を作ったガッツある行動と評している。
海軍には「指揮官先頭」の伝統があったが、山本はそれを無視し、真珠湾でもミッドウェー海戦でも、先頭に立たず自らの身を後方においたという。日本が苦闘していたガダルカナルにおいても山本が先頭に立つことはなかった。
渡部氏は、山本のこの気概のなさは「戦艦大和の快適さ」が生み出したものではないか、と興味深い話をしてくれている。
戦艦大和の居住性が極めて良好で、冷暖房とエレベーターを完備していたほか、なんと「ラムネ製造機」や「アイスクリーム製造機」までが設置されていたという。
その快適さは「大和ホテル」とも揶揄され、食事は洋食のフルコース。山本が食事をするときには軍楽隊が音楽を演奏していたというから驚きだ。
渡部氏は言う。
「このような事例を知るにつけ、なんとも残念な気持ちがこみ上げてきて、日本は本気で戦争をしていたのか、疑いたくなる。ああ、当時の将官にもっと“ガッツ”があればと、あまりの慨嘆に天を仰ぎたくなるのである。」と。
渡部氏は、ガッツがあった軍人として、陸軍大臣:木越安綱(きごしやすつな)を、ガッツがなかった軍人として、連合艦隊司令長官:山本五十六の名前を挙げている。
ガッツがあった木越安綱の偉業
木越は金沢生まれ、軍隊養成学校(陸軍教導団)の出身から頭角をあらわし、日清戦争において功績をあげた。その後、日露戦争でも大活躍して陸軍大臣に抜擢されたが、渡部氏が「ガッツがある」と評したのは、その戦歴ではない。軍備拡張をめぐる政治問題で内閣が潰れた際、「軍部が内閣を潰せるようなことでいいのか?戦争をするかどうかを決めるのは政治であり、軍隊ではない」と考え、陸軍部内の反対を押し切って、「陸海軍大臣は現役の大将と中将に限る」という規定を削除したのだ。
これにより木越は徹底的に陸軍内部から憎まれ、その後、昇進することはなかったが、渡部氏はこの木越の行動を大正デモクラシーの基盤を作ったガッツある行動と評している。
ガッツがなかった山本五十六の不甲斐無さ
一方、ガッツがない軍人として渡部氏が名前を挙げたのは、意外にも連合艦隊司令長官の山本五十六だった。海軍には「指揮官先頭」の伝統があったが、山本はそれを無視し、真珠湾でもミッドウェー海戦でも、先頭に立たず自らの身を後方においたという。日本が苦闘していたガダルカナルにおいても山本が先頭に立つことはなかった。
渡部氏は、山本のこの気概のなさは「戦艦大和の快適さ」が生み出したものではないか、と興味深い話をしてくれている。
戦艦大和の居住性が極めて良好で、冷暖房とエレベーターを完備していたほか、なんと「ラムネ製造機」や「アイスクリーム製造機」までが設置されていたという。
その快適さは「大和ホテル」とも揶揄され、食事は洋食のフルコース。山本が食事をするときには軍楽隊が音楽を演奏していたというから驚きだ。
渡部氏は言う。
「このような事例を知るにつけ、なんとも残念な気持ちがこみ上げてきて、日本は本気で戦争をしていたのか、疑いたくなる。ああ、当時の将官にもっと“ガッツ”があればと、あまりの慨嘆に天を仰ぎたくなるのである。」と。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点
『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題
日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘
人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か
「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ
ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化
第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16