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DATE/ 2022.09.13

昔の夏より今はどれぐらい暑いのか?

 「猛暑」や「酷暑」という言葉とともに、昔に比べて気温が上がったという話は随所で聞かれます。気象庁によると、「猛暑日」とは最高気温が35度を超える日のこと。一方「酷暑日」は2022年に日本気象協会が独自に定義したもので、最高気温40度以上の日のことです。つまり、「酷暑日」というのはごく最近の言葉です。確かに感覚的には昔より今の方が暑くなった気もしますが、実際のところどれくらい上がっているのでしょうか。過去のデータを遡って見てみましょう。

30年前との気温比較

 気象庁は過去の気象データを公開しています。東京のデータに絞るとサイト上でデータを閲覧できるのは1872年以降のようです。ここでは東京のデータを取り上げ、今からおよそ30年前の1989年から1991年の3年間と、直近かつ年間データの揃っている2019年から2021年の3年間を比較してみます。

年間平均気温
30年前 1989年16.4度 1990年17.0度 1991年16.4度
30年後 2019年16.5度 2020年16.5度 2021年16.6度

年間最高気温
30年前 1989年33.5度 1990年35.9度 1991年35.6度
30年後 2019年36.2度 2020年37.3度 2021年36.8度

年間最低気温
30年前 1989年0.9度 1990年-1.4度 1991年-0.8度
30年後 2019年-1.2度 2020年-2.1度 2021年-2.4度

8月の平均気温
30年前 1989年27.1度 1990年28.6度 1991年25.5度
30年後 2019年28.4度 2020年29.1度 2021年27.4度

 この3年間の比較でいくと東京の年間平均気温に関しては、意外と変わっていないようです。ただし年間最高気温や8月の平均気温を見ると上昇していることがわかります。一方、年間最低気温を見ると、ここ3年は30年前よりも若干下がっています。東京はコンクリートやアスファルトの地面が多いといったように、やや特殊事情を考慮する必要はあります。もちろんこのデータだけで全体を語ることはできませんが、少なくとも東京の気温は上がっているといった傾向は読み取れるように思われます。

猛暑日は増えている

 別の角度からもみてみましょう。気温が高かった日の日数を取り出してみます。以下、左から「真夏日(最高気温30度を超えた日)」の日数と「猛暑日(最高気温35度を超えた日)」の日数です。

30年前
1989年 47日 0日
1990年 60日 2日
1991年 45日 4日

30年後
2019年 55日 12日
2020年 54日 12日
2021年 52日 2日

 真夏日の日数は、取り出した3年間を平均すると30年後の方が若干増えています。また猛暑日に関して補足すると、2009年以前は1995年の13日を除いて一桁もしくは0日です。一方、2010年以降2021年までの11年間で二桁に達した年が6回あります。猛暑日はここ数年で一気に増えています。もしかしたらこの点が「最近は暑くなった」という感覚の出どころかもしれません。ちなみにこの「猛暑日」は気象庁が2007年4月1日に定義しています。

1920年頃の東京の平均気温は今よりおよそ2度低い

 このようにみてみると、やはり気温はここ数年で上がっていると考えた方が良さそうです。もう少し遡って、およそ50年前の1970年と、およそ100年前の1920年の東京の気温をみてみましょう。わかりやすいように2020年のデータも併記しておきます。左から年間平均気温、年間最高気温、年間最低気温、8月の平均気温、真夏日の数、猛暑日の数です。

2020年 16.5度、37.3度、-2.1度、29.1度、54日、12日
1970年 15.2度、35.5度、-4.0度、27.4度、51日、4日
1920年 14.2度、32.5度、-4.3度、25.7度、38日、0日

 どの数値をみても2020年よりも50年前(1970年)の方が低く、また1970年よりも100年前(1920年)の方がより低くなっています。もちろん100年前の東京は今よりももう少し、むき出しの土があったとは思われます。こういった要因も含めて詳しく考える必要はありますが、少なくとも東京に関しては「昔よりも今の方が暑くなっている」ということは事実と言っていいようです。

<参考サイト>
気温について|気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq3.html
過去の気象データ検索|気象庁
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
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