テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.09.27

目指す役職と現実のギャップ…賃金格差は?

 せっかく会社に入ったなら、目指すのは社長!若い頃はそんな理想を持っていても、実際に社長になれるのはごくごく一握りの人だけですが、実際のところどれくらいの役職にまで昇進するのが“普通”なのでしょうか。部長は無理でも課長くらいは…?そして出世する、しないでどのくらい賃金格差があるのでしょうか。

「部長以上になりたい」若者は微減傾向

 日本生産性本部が行った平成31年度の新入社員1792人を対象にした「働くことの意識」調査結果によると、「どのポストまで昇進したいか」という質問に対し社長と答えたのは12.6%でした。重役は15.6%、部長は14.7%、課長は7.1%。部長以上を挙げた割合は42.9%でしたが、平成21年度の調査では44%だったため微減の結果になっています。一方で課長を挙げたのは5.2%から7.1%までアップしており、“ほどほど”の出世で良いというタイプがやや増えていることが見て取れます。

 では実際のところ皆だいたいどのあたりまで出世できるものなのでしょうか? 連合の賃金レポート2021を見てみると、2020年は部長級2.7%、課長級6.7%、係長級5.9%、 他役職 7.9%、非役職 76.7%とのことです。これを見ると3/4はヒラ社員とも見えますが、この先出世する人も含まれているので、これをもって部長になれるのは3%以下、とは言えないでしょう。便宜的な測り方として、役職者比率が高い男性大学・大学院卒 50~54歳層がどの程度役職についているか、という調査結果もあります。部長級、課長級の合計は、1985年だと53.9%でしたが、その後年々減少して2020年頃は40%前後を推移しています。約30年前に入社したいわゆる「バブル世代」の大卒男性は、ざっくり10人のうち4人が部課長以上にまで出世した、と言えそうです。「部課長」と一緒くたにしてしまっていますが、部長級だと15%前後になります。世代の差こそありますが、部長以上になりたい若者は40%以上いるのに対し、その若者の上司にあたる部長たちは上位15%の精鋭だ、とも言えるのです。

部長になれば給料は平社員の2倍?

 では部長、課長まで出世した場合、その“見返り”、つまり給料はどれくらいもらえるのでしょうか?同じく連合の調査によると、部長級と非役職の賃金差は、非役職者を100とした時に2000年までは140程度だったものの、2020年は165.4まで上がっています。課長も2000年までは125前後でしたが、2020年は140.1です。調査の主体は異なりますが、厚生労働省の令和2年賃金構造基本統計調査だと平社員との格差はもっと大きく、平社員の平均月給は29.8万円、課長級で49.9万円、部長級で60.1万円。平社員を100とした場合、課長で167.3、部長で201.7、つまり2倍にもなるわけです。

 この差は平均年齢の差から生じる部分もありますが、部課長は責任を負う必要がある一方、対価はその分(?)もらっていることになりますね。仕事のきつさのわりに給料が多いか少ないかはそれぞれ感じ方が異なるところかもしれませんが。こうした“リアル”を知ったら、「部長以上を目指す」と答えた約40%の若者たちの意思は果たして上にぶれるか下にぶれるか、どちらになるのでしょうね。

<参考サイト>
・平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査結果 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/research/detail/002741.html
・連合・賃金レポート2021│日本労働組合総合連合会
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2022/wage_report/wage_report_hon.pdf?36
・令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長