テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.09.06

知らないと大損?クレカ不正に関するルールが変わる!

 2015年10月1日、アメリカでクレジットカードのルールが変わる

 このところ、東京五輪といえば「エンブレムの盗用疑惑」や「スタジアムの建設計画見直し」など、情けないニュースばかりである。国の魅力を伝えるせっかくのマーケティングチャンスであるのに、外に向けて発信したくない話題しか見当たらない。政府や組織委員会が主導する取り組みでは、準備が思うように進まず空回りが続いているが、市民レベルでは、これを他山の石として、日本らしいホスピタリティを発揮できるようしっかり準備していきたいところである。

新ルールでは、お店が責任を持つことに

 そんな折、クレジットカードの世界で、ちょっとした地殻変動が起ころうとしている。10月1日に、冒頭にも書いたがアメリカで新ルールが導入される。カード取引を扱っている個人事業主やその関係者は、今から注意を払っておく必要がある。ひとつ間違えると、ある日突然、誰かの不正のために大きな借金を抱えることになってしまうからだ。

 どういうことか。

 およそ1ヶ月後のこの日、“ライアビリティシフト”と呼ばれる変化が起こる。これは、その日以降、一部のクレジットカード決済において不正が行われた場合、これまで「カード発行会社が負っていた債務責任(ライアビリティ)を、加盟店側が負うことになる」というものである。

 内容はこうだ。ICチップ付きのクレジットカードを使った取引で、店側にICカードリーダー(読み取り設備)がないため、従来のスワイプ方式(機器にカードを通す方式)の決済を行った場合、スキミング(磁気カードに書き込まれている情報を抜き出し、同じ情報を持つカードを複製すること)などのカード犯罪によって生じた負債は、店側が背負うことになってしまうのだ。要するに、「今後は、不正を防ぐためのテクノロジーを導入していないほうが責任を取るようにしよう」という話である。

日本は五輪開催の2020年までに完全対応

 この背景には、従来の磁気ストライプを使った認証システムがカード犯罪の温床となっているという現実と、そのために、より安全性の高いICチップ方式へと移行させようという世界的な動向がある。アメリカでは同日、ビザ、マスターカード、アメリカン・エキスプレスといった主要カード会社が一斉に新ルールを適用することになる。ヨーロッパやアジアの主要国、またカナダやオーストラリアはさらに進んでいて、IC化とライアビリティシフトがすでに完了している。日本では昨年、経済産業省が「2020年までに100%IC化」という目標を発表している状況だ。そして、10月1日に国内最大シェアを誇るVisaカードがライアビリティシフトを率先しようという段である。

 今回のルール変更では、一般消費者に特段の影響はない。それによって突然、債務責任が降り掛かってくるようなことはなく、すでに持っていない場合に、カード会社からICチップ付きの新しいクレジットカードが送られてくるというくらいだろう。しかし、今や「Square」や「Coiney」など、スマホを使ったクレジット決済が誰にでも簡単にできる時代である。普段、カードビジネスに関わっていないことでかえってガードが甘くなってしまい、そこに犯罪グループの影が忍び寄ってくる、ということも考えられる。「これからは、ICカードリーダーを持たずにカード決済をするのは危険だ」ということは、覚えておいて損はないはずだ。

 なお、経産省が掲げた2020年というのは、もちろん東京オリンピックを意識した期限設定である。100%IC化が実現されるまでは、店側が債務責任を避けるために、「ICカードお断り」という対応をすることも予想されるが、それでは日本が誇る「おもてなし」精神の名が廃れるというもの。すでに1万円以下のICカードリーダーも出回っている。クレジットカード加盟店には、日本のイメージ戦略のためにも、ぜひ早めの導入を検討してもらいたいものである。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長