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DATE/ 2023.06.11

子どもを追い詰める?逆効果ワードとは

 子どもにとって、保護者や身近な大人たちからかけられる言葉の影響力は大きいものです。

 そのため、子どもの人格や能力を否定するような「NGワード」はもちろん口にしてはいけませんが、たとえ子どものためを思って発した言葉であっても、結果として子どもを追い詰めてしまうような「逆効果ワード」もあり、注意が求められます。

 では、子どもを追い詰めてしまうような「逆効果ワード」には、どんな言葉があるのでしょうか。「逆効果ワード」5選を見てみましょう。

子どもを追い詰める「逆効果ワード」5選

(1) 子どもの自主性や可能性を無視した「あなたには無理よ」

 子どもの自主性や可能性を無視した言葉は、子どもの成長や早い段階で失敗するといった貴重な機会を奪う「逆効果ワード」です。お手伝いしてくれようとしたのなら「ありがとう、助かるよ」、新しいことにチャレンジしようとしていたのなら「よし、やってみようか!」、そして残念ながら失敗したとしても「今度は一緒にやってみようか?」「どうしたらできるか考えてごらん」など、結果ではなく過程に注目した言葉で言い換えて、ぜひチャレンジ精神を尊重してあげてください。

(2) 子どもの状況を理解していない「やればできる!」

 大人の勝手な思い込みから発する「やればできる!」などの無責任な言葉は、子どものやる気を奪ったり、大人への信頼すら損ねたりしかねない「逆効果ワード」です。子どもの性格や状況をよく見て、具体的に「○○までできたんだ。がんばってるね」や「できないところ、一緒に見直してみようか」などの言葉で言い換えて、その子が「やっているのにできない」原因に一緒に向きあうことや、何も言わずに時機がくるまで待つことなどが肝要です。

(3) 子どもの不安をあおる「いじわるなことされてない?」

 「幼稚園は楽しい?」「嫌なことしてくるお友達はいないよね?」「先生に怒られていない?」といった子どもの不安をあおるような言葉は、子どもに不安や周囲への疑いの心を芽生えさせてしまう「逆効果ワード」です。「今日楽しかったことを教えて?」「幼稚園ではどんなことして遊んだの?」など、よいイメージの言葉に言い換えてみてください。

(4) 子どもの感情を否定する「泣いても仕方ないでしょ」

 本来、感情を素直に表せることは子どもにとって必要でありよいことです。それなのに、大人の都合で感情を否定されることは理不尽ですし、さらに子ども自身だって泣きたくて泣いているわけではなかったとしたらそれこそ、「そんなこといわれても仕方ないでしょ」という気持ちになるのではないでしょうか。子どもの感情に共感し「悲しかったね」「くやしいよね」などの言葉に言い換える、気持ちをそらしてあげる、ただそばに居て待ってあげるなど、親しい大人にしかできないことこそを実践してください。

(5) 子どもに価値観を押しつける「あなたのためなのよ!」

 本質的に「あなたのため」は余計なお世話です。どんなによい意見であったとしても、求めていない人にとっては不要です。心配なときこそ「あなたはどうしたいの?」「どうしたいのか、自分でよく考えて決めてごらん」などの言葉に言い換えて、子どもの探究心を深めてあげてください。さらに子どもが意見を求めてきたとしたら、そのときにこそ最良のアドバイスができるように準備してください。

子どもに言ってはいけない「NGワード」3選

 ちなみに、子どもに言ってはいけない「NGワード」としては、以下のような例が挙げられます。

(1) 子どもの人格や能力を否定する言葉
「うちの子はバカだから」「ダメ(アホ・マヌケ・不器用)な子」「最低(卑怯・嘘つき・ずるい)ね」
(2)子どもの容姿や属性を否定(比較)する言葉
「不細工(ブス・デブ・チビ)ね」「男(女)のくせに」「妹(弟・兄・姉)はできたよ」
(3)子どもの存在を否定する言葉
「そんな子はうちの子じゃない」「もうお母(父)さんは知りません」「生むんじゃなかった」

 そもそも、人格や能力、容姿や属性、さらには存在を否定する言葉は、子どもでなくとも言ってはいけない言葉です。ましてや感受性が豊か、すなわち強い言葉であればあるほど忘れることができない子どもにとっては、「NGワード」は後々まで悪い影響を受けやすい言葉といえます。

 人間関係や子育てに正解はありませんが、とはいえ、よかれと思っても結果として逆効果になることがあることも事実です。変化が激しい現代において、多様な可能性を持ち一人ひとりが違う子どもに向き合うとき、「ポジティブリスト方式」(やってもよいことだけを列挙しそれだけを実行する。そのため安全性は高いが自由度は低い)よりも、「ネガティブリスト方式」(やってはいけないことを列挙しそれ以外は何をしてもよい。そのため自由度は高いが安全性は低い)がよいように思います。

 ぜひ子どもへ声をかける際は、子どもを追い詰める逆効果ワードを「ネガティブリスト方式」で適切に活用してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・『子どもを伸ばすママの言葉がけ言ってはいけない「NG」ワード55』(曽田照子著、メイツ出版)
・『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』(曽田照子著、速水えりイラスト、研プラス)
・『小学生の子がどんどん勉強するようになる親のすごい声かけ』(葉一著、SBクリエイティブ)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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