テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.11.08

「ながらスマホ」は幸福度を下げる!マルチタスクが招く落とし穴

 「歩きスマホ」がマナー違反、危険な行為といわれ、注意されるケースが増えている。歩くときだけでなく、食事中や会話中にスマホを見る人が多く、「スマホ依存症」が急増している。ちょっとした暇を見つけては、ゲーム、メール、FacebookやTwitter、LINEなどを始めるのである。

 しかし、仕事とメール、会話とTwitter、食事とゲームなど、複数のタスクを同時進行する「マルチタスキング」は、実は決してオススメできない。幸福度を下げ、同時に生産性も下げてしまうからだ。

自分を幸せにするものに注意を向ける

 私たちが幸せになる秘訣は、自分を幸せにするものに注意を向けることだ。幸せを感じることは、人それぞれ違う。仕事第一、家族や子供との時間が最も大切、健康が一番、バカンスをとにかく楽しみたい。欲望はさまざまだが、幸せになる方法はシンプルで、自分の幸せに向けて集中すればよいのである。これは多くの方に納得していただけるだろう。

 まず間違いなく、誰もが幸せになれる方法が一つある。それは、気の合う人と一緒に過ごす時間を増やすことだ。逆に、1円でも無駄にできないような生活をしているなら別だが、一般的にはお金にはあまり注意を向けないほうがよいだろう。お金はもちろん重要だが、人生それがすべてというほどのものではない。

注意散漫は、幸せの敵だ

 幸せへの障害となるのは、一言でいえば「注意散漫」である。なぜかといえば、注意をスイッチするコストがかかるからだ。注意を何度も切り替えるのは、かなりのエネルギーを消費する行為なのだ。マルチタスキングが問題なのは、そのためである。

 オランダで行われたある調査から、1つの物事に集中するほうが、生産性が高まることがわかっている。「ながら作業」「ながら仕事」は、あたかも自分の生産性が高まったような気になるが、実際は逆なのだ。生産性や集中力が下がる分、幸福度も下がってしまう。適度な休憩は必要だが、幸せに注意を向ける際は、それ以外の余計な行動を挟まないのが得策だ。

スマホやインターネットから解放される

 いま、私たちを最も注意散漫にしているのは現代テクノロジーだろう。「Eメール博士」として知られるトーマス・ジャクソンは、Eメールだけで年間にして従業員ひとり当たりおよそ1万ポンド(約185万円)の損害をイギリスの企業にもたらしていると推定しているほどで、便利な反面、私たちの幸福度と生産性を下げる元凶となっている。

 スマホやインターネットは、常に私たちの注意を逸らそうとする。メールが次々に届き、Facebook、Twitterのタイムラインは絶えず更新されていく。これらにいちいち反応していたら、あっという間に疲れてしまう。幸せになる第一歩は、スマホやインターネットから解放されることだ。スマホを覗きたければ、集中の時間が終わってからに限ればよいのだ。

<参考文献>
・『幸せな選択、不幸な選択―行動科学で最高の人生をデザインする』(ポール・ドーラン/早川書房)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『失敗の本質』より先に指摘した日本型組織の弱点

『タテ社会の人間関係』と文明論(7)日本型組織とリーダーシップの問題

日本軍研究で知られる『失敗の本質』よりも前に、日本型組織の弱点を指摘していた『タテ社会の人間関係』。日本の軍隊と英米の軍隊を例にとって、人間関係を重視する日本型組織の特徴を鋭く指摘、さらに法然と弟子の話を取り上...
収録日:2024/05/27
追加日:2024/09/19
2

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景

ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大

長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争...
収録日:2024/07/25
追加日:2024/09/18
廣瀬陽子
慶應義塾大学総合政策学部教授
3

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘

人の資本主義~モノ、コトの次は何か?(1)「人の資本主義」とは何か

「人間とは何か」「資本主義とは何か」、この二つの問い、その概念は歴史の上で常に変化し続けているという中島氏。「人の資本主義」は人と資本主義の合成語だが、両者を結合するとどのような反応がもたらされるか。今よりもよ...
収録日:2024/04/11
追加日:2024/07/27
中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
4

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?

「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法

人生の約3分の1を、人は寝て過ごす。人間にとって不可欠な「睡眠」について、まだ分かっていないことが多く、睡眠ストレスや寝不足に悩む人は多い。現代人はどのように生活すれば最高の睡眠を得られるのだろうか。その前に、そ...
収録日:2021/06/23
追加日:2021/09/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ

ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化

第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られ...
収録日:2024/05/18
追加日:2024/09/16
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長