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天気予報は実学からファッション、新エネ活用の切り札に

気象予測の歴史と今後の展望

住明正
理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員
概要・テキスト
天気予報(気象予測)は現代の生活には当たり前の存在となっている。日本では西洋の技術が明治期に導入されるまで、「観天望気」と呼ばれる技術を蓄積してきた。各地に残る日和山の地名はその名残だ。そんな気象予測の歴史と今後の展望について、国立研究開発法人国立環境研究所理事長・住明正氏に伺った。
時間:10:30
収録日:2015/11/27
追加日:2016/02/18
タグ:
≪全文≫

●近代以前の気象予測は「観天望気」から


―― 明治から始まった気象予測の歴史的経緯と、今後の発展・進化について

住 近代的な気象予測は、明治政府が始まったために日本でも導入したのですが、昔から気象に関する関心や知識は高いものがありました。

 例えば、日和山 (ひよりやま)という地名を調べると、日本中で非常に多くの場所に分布しています。昔も航海や旅行のときに天気を読むことは非常に大切なことでした。それらはほとんど経験則で、今でも「観天望気」という名称で知られていますが、天、要するに空を見て将来の天気を予測することは、昔から経験的に知られていました。


●晴雨計から気圧へ。天気予報のスタート


住 中でも有名なのは、いわゆる「バロメーター」。これは日本語に訳すと晴雨計で、晴れか雨かを示す機械ですが、(測定しているのは)気圧です。気圧が下がれば雨、上がれば晴れるといった単純なメジャーで測ってきたわけです。

 気象の観測史上、天気変化が低気圧の移動によって説明できることが分かった画期的な事件がありました。(1854年、)クリミア戦争の最中に、フランスの軍艦(「アンリ四世号」)が沈没しました。それで、時のフランス天文台を中心に調査を進めたところ、大きな低気圧が西から来て、それが起こした暴風で沈んだことが分かりました。

 このことから、各地で気圧を観測して、その状況を追跡していけば天気予報ができることが分かったのです。逆から言えば、低気圧や高気圧のような大きなシステムがあって、それが「天気」という大きな現象をコントロールしています。そのため、大きな動きをつかまえておけば変化が分かるのです。これは、非常に大きなことでした。


●数値予報の発展と静止気象衛星


住 それを何とかして学問的にやろうというのが、「数値予報」の歴史です。

 19世紀後半にヘルムホルツという非常に偉い学者が出て、物理学、電磁気学、生理学など、ありとあらゆることを研究しました。このヘルムホルツの時に、いわゆる流体力学と熱力学が全部完成したわけです。それまでは、工学系のいろいろな理屈もそうですが、実際のいろいろな現象に照らして熱流体力学をやった人はいませんでした。彼の時に初めて熱力学と流体力学が完成して、それを使えば明日の天気が予測できるはずだと考えたのが、数値予報の始まりになります。

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