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伊勢志摩サミットがかすむ17分間のオバマ広島演説の意味

オバマ広島訪問

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2016年5月27日、日米両首脳による広島訪問(原爆死没者慰霊碑献花)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201605/27hiroshima.html)より
オバマ大統領の広島訪問、17分間に及ぶ広島スピーチは、報道としての伊勢志摩サミットがかすむほどの目覚ましさであった。この広島訪問と名演説はどのような文脈に立って行われたものなのか。政治学者で慶応義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が分析する。
時間:08:13
収録日:2016/06/01
追加日:2016/06/09
カテゴリー:
≪全文≫

●オバマ広島演説の、政治的文脈を考えてみる


 サミットの報道が、バラク・オバマ大統領の広島訪問一色になったことでかすんでしまったと言われます。そこで、ある意味で「オバマ広島訪問」をどう位置付けるかですが、オバマ政権は大統領任期後半に差しかかり、その期間が短くなってきてからキューバやイランを訪れ、日本訪問の直前にはベトナムへ行っています。その後、広島に訪れたことからして、過去のアメリカが敵対したり、戦争を行ってきた相手との和解という文脈が考えられます。

 キューバの例でいうと、アメリカはなぜそんなに長く意固地にキューバと対立を続けてきたのか、という問題の解消が挙げられます。その文脈で見ていくと、広島訪問は、日本人にとっては大変画期的なことですが、オバマ政治の延長でいうと、過去の紛争や戦争の後始末、和解という文脈に位置付けられるのではないかと考えられるのです。

 また、もう一つの文脈があります。2009年にオバマ大統領は、プラハ演説を行っています。核廃絶についての有名な演説で、ノーベル平和賞の授賞理由にもなりました。今回の演説はこの演説の続きとして、つまりスタートラインでの演説と任期終了に近い時期に行われた最後の演説ということで、これらをひとくくりの文脈を考えることができると思うのです。


●広島訪問とはあくまでも核による悲惨な経験と向き合う慰霊であり誓い


 日本人はこぞってオバマの広島訪問を非常に歓迎しました。それを支持する数字として、共同通信で98パーセント、日経で92パーセントという非常に高い値が出ています。90パーセントを超えるということは、ほぼ全員と言っていいでしょう。それだけ好意的に受け止められたわけです。

 これらを考え合わせると、17分間のオバマ・スピーチは、よく練れたものでした。スピーチのうまい大統領としてはもう一人、ビル・クリントン氏がいます。2000年沖縄サミットで彼の行った「平和の礎」という演説も、なかなか上手でした。スピーチの上手な大統領は過去も今も存在するということですが、世界に発するときにはどういうスピーチが必要なのかという事例でもあります。

 日本では、「謝罪をすべきか否か」という話が出ていました。また、「オバマが広島に来たのだから、安倍さんは真珠湾に行くべきだ」という話もありました。しかし、これは日本の外務省が採...
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