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戦争をしていない日本で政府負債が200%になる理由

日本は何と戦っているのか

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、政府の負債と戦争の関係を例に、日本が抱える難題を鋭くえぐり出す。歴史的に見ても、戦争が起こると政府の負債が200パーセント近くになるというデータがあるのだが、ごく最近も同じような状況になっている。一体、日本は何と戦っているのだろうか。
時間:10:12
収録日:2017/03/27
追加日:2017/05/04
≪全文≫

●データに見る戦争と政府負債の関係


 日本は何と戦っているのか、どこと戦っているのかという、一見すると非常に奇妙な問いについてお話をします。

 トマ・ピケティのこの図をご覧いただくと分かると思いますが、イギリスはGDP比で政府の負債が200パーセントほど出てくるのは、ナポレオン戦争(18世紀末~19世紀前半)の時と第二次世界大戦後です。日本も明治以降、特に財政の記録が出てきてからをご覧になっていただくと分かると思いますが、200パーセントに近い数字になった、あるいはそれを超えたのは、第二次世界大戦、つまり昭和19年、20年頃です。それから、戦後でいえば、ごく最近のことです。厳密には200パーセントは超えておらず180数パーセントですが、200パーセント近い数字を持っているということです。


●戦争をしていない日本の負債が200パーセントに近い不思議


 この図の比較を単純に図式的に見ると、戦争を行っていると政府の負債が200パーセントになるということがよく分かります。日本も第二次世界大戦の時には、200パーセントになりました。では、今は戦争をしていないのになぜ200パーセントになっているのか、という疑問が出てくると思います。逆にいうと、今戦争をしているとすればそれはよく理解できる、ということになります。では戦争をしているとしたら、何の戦争をしているのですか、ということが今日の話題になります。

 戦争をしているときほど、財政出動をして財政を賄わなければいけません。「戦争のために財政を賄う」とは、戦費調達のために戦時国債を発行するということです。そうすると、国債の発行が累積していくわけですから、200パーセントの意味がよく分かります。また、戦争だと大本営発表があって、(そのために)「被害は軽微なり。敵に甚大な被害を与える」というようなことを言っても不思議ではないのです。この点に関して、経済学者や財政学者の中には「たいしたことないんだ」という人もあれば、「いやいや、大変なことなんだ」という人もいます。いずれにしても、今は大本営発表の時と非常に似ていると思います。


●社会保障費を保険料で賄えれば問題ない


 では、日本は一体何に対して戦っているのか、どこと戦争をしているのかというのが分からないことには、現状把握はできません。そこで次の図を見ていただければ分かると思うのですが、日本は社会保障費を...
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