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文在寅大統領の誕生と韓国が抱える多くの課題

2017年韓国大統領選挙の見方と韓国の課題

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏が2017年5月に行われた韓国大統領選を読み解く。曽根氏は日韓の間にはいくつかの見方の違いがあることを指摘し、日本の視点だけでは見えてこない韓国の政治、経済、社会の実情を分析。そこから浮かび上がってくる韓国の課題に言及する。
時間:12:54
収録日:2017/05/11
追加日:2017/05/28
カテゴリー:
≪全文≫

●今回の韓国大統領選挙の見方が日韓で異なっている


 韓国では大統領選挙の結果、文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選しました。この選挙をどう読み解くか、どう見るかということですが、基本の見方として日韓ではこの選挙の捉え方が違っています。

 日本の場合、北朝鮮の問題があります。米日中の協力で北朝鮮に対抗しなければいけません。その文脈の中で、韓国の選挙はどうなのかという見方があります。あるいは、日韓関係はこれから良くなるのか。どちらかというと日本に厳しい態度の文在寅氏をどう扱ったらいいのか。または、慰安婦問題、慰安婦像の問題について解決できるのか。これらの観点が挙げられるわけですが、韓国は違う見方をします。


●日本と世界で異なる「拉致」「核」「ミサイル」の優先順位


 違う見方というのは、韓国の方がずれている場合もあるし、日本の方がずれている場合もあるということです。例えば、北朝鮮について、日本の場合は「拉致」「核」「ミサイル」という順序で話をします。ですが、世界は「核」「ミサイル」あるいは「体制転換」、そして最後の方に「人権」がきてその人権の中に「拉致」の話題がくるという順序です。これは日本との見方の違いです。ですから、日本の見方の方がずれている、普通とは少し違う見方をしている、ということになります。

 韓国がずれている時もあります。例えば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)時代に外交戦略として、「韓国は東アジアのバランサーになる」と言い出したのです。「バランサー」とは要するに、韓国が中国、ロシア、日本、アメリカなどをバランスよく動かすということですが、果たしてそのようなことができるのか。韓国は(国際政治の)従属変数的な位置付けではないのか、と思っているわれわれにとってはびっくりするような発言があったのです。このような韓国の勘違い、思い違いはかなりあります。


●文在寅氏当選は朴槿恵の弾劾・罷免の延長という見方


 今回の場合、宥和政策を文在寅氏が取るのだろうか。このあたりのところも、日本あるいはアメリカから見ると、少し心配な点があります。仮に宥和政策を取ったとしても、それが有効なのだろうか。太陽政策とは今、言うべきことなのだろうか。こういう疑問があります。あるいは、韓国では国民感情法とも呼べるものがあって、それに逆らうと、弾劾、罷免といったこともある、といわれてい...
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