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高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている

最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛

菊地臣一
福島県立医科大学 元・理事長兼学長
概要・テキスト
「世界中で、3カ月以上続く慢性腰痛が増えています」と語るのは、福島県立医科大学理事長兼学長の菊地臣一氏だ。今、腰痛と腰痛治療の世界で何が起こっているのか。菊地氏が最新の情報や治療法、考え方を紹介する。(全2話中第1話目)
時間:13:58
収録日:2016/01/25
追加日:2016/06/06
≪全文≫

●腰痛治療に「EBM」と「NBM」が導入された


 福島県立医科大学整形外科医の菊地臣一です。今回は、誰もが一度は経験するという「腰痛」について、最近の知見を紹介したいと考えています。

 近年、腰痛に対する考え方や治療が大幅に変わってきています。まずはその背景についてご紹介します。スライドに示すように一番大きいのは、「EBM(evidence-based medicine、根拠に基づいた医療)」の導入です。これは、われわれの思い込みや偶然を排除する効果があり、従来の分子生物学、病態生理学などミクロの手法に代わり、患者さんのデータを定量化する臨床疫学というマクロの手法に基づいて結論を出していきます。具体的には、RCT(Randomized Controlled Trial、ランダム化比較試験)というものを用います。

 次のスライドが示すように、最近は、EBMだけでは不十分だということが分かってきました。人間は感情やさまざまな環境に左右されるからです。そこで、合わせて必要だと考えられてきたのが、「NBM(Narrative‐based Medicine)」という考え方です。つまり、対話を重視する医療です。EBMは科学的な手法で、誰にでも適用できますが、一方で個々の患者さんには、言葉でしか表せないこと、数値では必ずしも表現できないことがあります。これは、EBMを補うためのもので、わが国で古来いわれている「手当」という概念と一致していると、私は考えています。患者の個人的、社会的な背景を評価して、診療に生かそうとする手段なのです。

 事実、EBMが世界各国で導入され、広く用いられるとともに、医療はサイエンスだけでは不十分ではないかといわれています。次のスライドが示すように、われわれの先人たちが培ってきたアート、経験による知恵も大切であることが逆に裏付けられたのです。EBMは、結果的にNBMの重要性を証明したといえるでしょう。最近では、今まで気のせいだとされてきた「プラシーボ効果(偽薬効果)」が、実は現代医療で最も効果のある薬物療法の一つではないかとさえいわれ始めています。われわれは、こういった事実を十分に考慮して治療に当たる必要があります。


●腰痛は若い人にも多く、生活習慣病と密接な関係がある


 次に、「疫学」に移ります。先ほどご紹介したように、腰痛は、人間の...
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