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ブロックチェーン技術と仮想通貨で貨幣の在り方が変わる!?

フィンテックと金融革命(5)貨幣の在り方と日本の将来

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
「中長期的には、フィンテック技術が貨幣の在り方、ひいては政府や司法システムの在り方を変えるかもしれません」と、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は言う。将来、技術はどのように貨幣を、金融システムを、そして国や社会を進化させていくのか。柳川氏が予測する。(全5話中第5話)
≪全文≫

●技術が国や政府の在り方を大きく変えていく


 では、中長期的にはどのような可能性があるかというと、一つは先ほど申し上げたように、貨幣の在り方が大きく変わるかもしれないということです。それから、政府の在り方、規制の在り方が変わってくるかもしれないということです。このあたりは未来予想ですから人によってずいぶん考え方が違いますし、不確実性が高いことも事実です。なかなか明確なことを言いにくいのが実情ではありますが、私なりに考えている点をいくつかお話しさせていただこうと思います。

 長期的に構造を大きく変えるエンジンになるのは、やはりブロックチェーン技術でしょう。前回はあまり注目しませんでしたが、ブロックチェーン技術の重要なポイントは、情報の正確性や健全性を技術によって実現させようという点にあります。現在、契約の履行を実現させるのは、政府の国家権力や司法システムです。間違ったことが書かれていないかといったことは、最終的には司法システムで安全性、情報の正しさを担保するのが基本的な前提です。

 ところが、ブロックチェーン技術は安全性や情報の正しさを技術そのもので可能にできるかもしれないという扉を開きました。ビットコインはその情報を暗号技術によって分散的に処理することで、技術と参加者がその情報の正しさを証明・確保していく仕組みになっています。ここには中央集権的な政府や司法システムが必要ありません。

 そうなってくると、これまでの法律や制度の考え方が変わってきます。この話を進めていくと、政府はどこまで必要なのか、契約が履行されているかどうかをチェックする司法システムや法律がどこまで必要なのか、という議論が出てくるのです。実際、全てをブロックチェーン技術で代替できるのではないか、社会システムそのものを技術に乗せてしまえるのではないかといったことを考えている人が増えてきています。このようにして技術が国や政府の在り方、世の中を大きく変えていくだろうといわれているのです。


●中央銀行はもしかすると要らなくなるのではないか


 ただし、現状である程度分かっているのは、今申し上げたように、ブロックチェーン上で政府や司法、法律を代替できる可能性はまったくゼロではないけれど、当初考えられていたよりは難しいということです。つまり、ブロックチェーン上で全てがうまく回せるわけではない...
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