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ビッグデータの活用が教育業界に革新をもたらす

ビッグデータの実用化~その課題と効果(3)教育分野への展開

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、教育現場でのビッグデータの活用について解説する。従来、良い教え方は、個々の先生の経験と勘に依存してきた。子どものタブレット学習を通じて、学習プロセス自体がビッグデータ化されれば、教え方だけでなく、テキストやアプリの改善も可能になる。(全3話中第3話)
時間:12:17
収録日:2017/06/29
追加日:2017/08/06
タグ:
≪全文≫

●データと学習プロセスは、先生の頭の中だけで完結している


 ビッグデータを用いたビジネスチャンスは、今後多様な形で登場するでしょう。私が最近目にして、面白い、発展性があると思っているのは、教育分野です。教育はITやIoT(モノのインターネット)、AIによってかなり大きく変わろうとしています。特に重要なパーツになるのは、ビッグデータを活用した教育の革新・改善です。

 どのように教えれば子どもが分かるようになるか、子どものつまずきをどのように解消できるかといったことは、伝統的には、各先生の経験に基いて培われてきました。ベテランの先生は、子どもがつまずくところをよく分かっているため、適切な教え方ができます。間違ったり、悩んでいる子どもがいれば、適切なアドバイスをすることができるということです。こうしたことは、ベテランの先生の長年の経験に基づくものです。長年の経験、言い換えれば、その先生の頭の中にたまってきたデータに基づいて、教え方を工夫しているのです。非常にプリミティブな形ですが、データに基づいて、個々の先生が教え方を工夫し、その中で教え方がうまい先生は良い先生だと評価されてきました。

 つまり、データと学習のプロセスは、先生の頭の中だけで完結しており、かなり属人的にデータが処理されてきたのです。もちろん、先生同士で教え方についてディスカッションをしたり、先輩教の先生が後輩の先生に教え方をアドバイスすることもあるでしょう。それにしても、教え方は属人的なものでした。この意味で、情報やデータはもったいない使われ方をしています。つまり、他の先生のところで蓄積されたデータを、十分活用できていないということです。これは今までの教え方の技術における限界です。


●タブレットを用いて、きめの細かい教育ができる


 ところが、こうした状況がコンピュータの発達によって、かなり大きく変わろうとしています。今では、タブレットにアプリを入れて、アプリを通じて子どもに学習させるという仕組みが、随分普及しています。子どもたちは一人一人、自分のタブレットのカリキュラムに基づいて、学習することができます。こうした取り組みが非常に注目されています。

 タブレットを使えば、面白く学べるので、やる気が出ます。また、タブレットを使って、一人一人に応じたカリキュラムを組むことができます。例えば、1番と2...
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