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サービソロジーによるサービスイノベーションの具体的事例

サービソロジーと経営~サービスイノベーション(5)価値提案から利用価値共創

村上輝康
産業戦略研究所 代表 
概要・テキスト
産業戦略研究所代表の村上輝康氏が、サービソロジーによるサービスイノベーションについて具体的事例をもとに解説する。第一弾は個人の訪日外国人旅行客のニーズに応える旅行プラン作成支援ツールの開発についてだ。提供者による一方通行の「価値提案」ではなく、利用者の「事前期待」に柔軟に応えることで「利用価値共創」を可能にした好例である。(全9話中第5話)
≪全文≫

●途切れたサイクルをつなげて問題解決へ導く


 サービソロジーは、優良事例を模倣するのではなく、サービスイノベーションのプロセスを自ら生み出そうとする事業者に対して、科学的・工学的なアプローチによる多様な知見、あるいは手法を整備しつつあります。サービソロジーによるサービスイノベーションの事例について、国の研究開発である「スフィア(S3 FIRE、問題解決型サービス科学研究開発プログラム)」の事例を中心にしながら、シリーズでお話をしていきたいと思います。

 サービソロジーの中では、サービスイノベーションは利用者サイドの「利用価値共創」のサイクルが提供者サイドの「経験価値共創」のサイクルにきちんとつながって、それがマーケットでの「交換価値」の実現につながる、一回り大きなサイクルを持続可能にする、ということでした。

 しかしながら、通常のサービスというものはどんなに優れたサービスでも、なかなかそういうわけにはいきません。どこかが弱かったり、途切れていたり、あるいはつながっていなかったりしているのです。サービソロジーはそうした弱いところや途切れているところ、あるいはつながっていないところに対して、可視化・構造化・最適化という科学的・工学的な手段を準備することによって、問題を解決しようとしているわけです。

 これからシリーズでお話をしていくに当たり、お断りしておきたいのは、こうした場合、目覚ましいサービスイノベーションの事例をお話しすることが多いかと思いますが、私がこれからお話ししようとするのは、その目覚ましいサービスイノベーションの事例を創っていくためにはどのようなことをしなければいけないのか、というお話だということです。


●訪日外国人向け観光サービスに見る価値提案事例


 まずは、価値提案からです。あらゆるサービスイノベーションは、提供者からの新しい価値提案で始まります。ここでの課題は、「これまであまり馴染みのない、良く知らない顧客に対しては、どのように価値提案をすればよいのか」という事例です。これについては、スフィア(S3 FIRE)の東京大学・原辰徳准教授のプロジェクト(プロジェクト名:「顧客経験と設計生産活動の解明による顧客参加型のサービス構成支援法」)で外国人向けの観光サービスの問題を扱っています。これにはJTBと首都大学東京が参加しました...
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