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注目を集めたヒューマンファクターによる航空機事故

航空機事故ゼロをめざして(3)ヒューマンファクター

鈴木真二
東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長
概要・テキスト
着陸復行してから墜落に至るまでのイースタン航空401便の飛行経路
(NTSBの事故報告書より)
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、ヒューマンファクターによる航空機事故について解説する。1972年、イースタン航空401便の墜落事故は、100名を超す死亡者を出す。大事故に至った原因は、些細な見落としや間違いの連鎖だった。(第3話)
時間:09:09
収録日:2017/10/30
追加日:2018/02/04
≪全文≫

●1972年、イースタン航空401便の事故


 技術的な課題が徐々に克服されていく一方、大きな航空機事故の要因として、次にクローズアップされてくるのがヒューマンファクターです。

 それが注目されたのは、1972年、イースタン航空401便の事故でした。飛行機は、ランディングギアと呼ばれる脚が出ていることが確認されなければ、着陸できません。パイロットが脚を下ろす操作を行うと、脚が確実に下りているかを確認するために、操縦席にはランプが点灯する仕組みになっていました。

 マイアミ空港に向かっていたトライスターL-1011のパイロットがこのランプを確認したところ、ランプが点灯していないことに気が付きます。夜間でしたので、管制官から脚が出ているかどうかを確認するのも困難です。そのため、機長はいったん着陸を取りやめにします。「着陸復行」という言い方をしますが、もう一度高度を上げて飛行を維持し、その間に脚が本当に下りているのかを確認しようとしたのです。

 この時、パイロットは、高度2,000フィートで自動操縦する設定を行いました。トライスターL-1011には、非常に高度な自動操縦機能が組み込まれていました。自動操縦中に脚降下を示すランプを取り出して確認したところ、ランプが切れていることが分かりました。本当に脚が出ているかどうかを確実に認識するため、機関士をコックピットの床の下に潜らせてみたのですが、内部が暗くてはっきりしたことはまだ分かりませんでした。


●高度の降下に誰も気が付かなかった


 こうした状況が続くうち、自動操縦装置が切れてしまいます。自動操縦は操縦桿をパイロットが操作すれば切れる設計になっており、これは素早く手動操縦に切り替えるための安全上の設計でしたが、知らず知らずのうちに操縦桿にパイロットの肘が触ったのでしょう。自動操縦が切れたために、機体の高度は下がっていきます。

 航空機の中にはキャプテン、それからコパイロット(副操縦士)、機関士、さらにエアラインの検査官も乗っていました。しかしコックピット内の人は皆、脚が下りているかどうかの確認に注意を取られてしまっていて、高度が次第に降下しているということに誰も気が付きません。夜間で暗く、飛行していた場所は沼地の上でした。街の明かりを見ることもできません。パイロットは計器でしか高度を確認できない状況でしたが、誰も計器を確認しなかった...
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