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新しい「宮大工システム」を構築すべき?

日本企業のグローバル戦略~外資系企業との比較(5)日本企業の課題と解決策

大上二三雄
MICG代表取締役
概要・テキスト
これまでに語ってきたソニー、富士通、ファナック、デュポンなどの具体例を踏まえて、「宮大工システム」「知足安分」などのキーワードを縦横に使い、大上二三雄氏が平均的な日本企業が現在抱える課題とその解決策を分析する。
時間:17:15
収録日:2014/04/24
追加日:2014/06/19
≪全文≫

●「宮大工システム」を変えなくてはならない


 これまで欧米企業との対比で、日本企業の課題を具体的に考えてきました。そもそも企業の課題とは個々に固有のものであり、一般解、共通の答えは存在しません。しかし、あえて課題を普遍化するために、今回は平均値で考えた日本企業の課題と解決策をお話ししたいと思います。

 まずは課題ですが、一つ目にお話ししたいのは、「宮大工システム」のことです。多くの日本企業は、ミドル層が頑張り、トップの親分がミドル層を支援する体制をとり、全社一丸となって時に飲んで語り合いながら進んできました。このようなかつての宮大工のような仕組みがこれまでの成功要因だったと思います。

 しかし、これは日本人の以心伝心を前提にしたシステムです。日本国内だけで良いものを作っていく仕組みとしては、宮大工システムは今も機能すると思うのですが、世界に出て行き、グローバルでものを作り、サービスを提供していかなければならない場合、宮大工システムでは独りよがりになってしまい、日本企業はガラパゴス化していると言われてしまいます。グローバルではどうしても宮大工システムを変えていかなくてはなりません。

 一方で、内在的な要因を考えても、宮大工システムを変えていく必要があります。例えば、社員旅行、運動会、寮といった以心伝心を育む仕組みが日本社会の中からなくなっています。結果的に、体育会系出身者は今もそれなりに宮大工システムの中でやっていけるよう鍛えられていると思いますが、それ以外の人は、なかなか以心伝心の仕組みの中でやっていくのが難しくなってきています。そのような私たち自身の変質の問題もあります。


●今の日本企業には、知足安分に陥る危険性がある


 次に、今の日本企業には、知足安分に陥る危険性があると思います。日本には、伝統的に環境に合わせて「足るを知る文化」があります。それでもかつては皆が貧しかったですから、とにかく豊かになりたいと上昇志向で頑張ってきたのですが、全体的にある程度豊かになった今では、さらに頑張って得ようというより、どうしても現在の繁栄を維持したいという姿勢になってしまいます。企業は本来、一丸となって成長して成果を分かち合うのが目的ですが、いつの間にかその究極の目的を忘れ、経営陣や社員の人生や収入などがそれなりに満たされればよいと考えてしまうのです。あ...
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