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イギリスはEU離脱後も国際的地位を保てるのか?

2018年激動の世界と日本(8)イギリスのEU離脱交渉

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
難航していたイギリスのEU離脱交渉は、ようやく2017年末に多少の進展を見せた。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が、EU離脱交渉について解説する。2019年3月29日のタイムリミットまでにEUとの交渉をまとめられたとしても、イギリスは離脱後も現在の国際的地位を保っていられるのか。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第8話)
時間:06:45
収録日:2018/01/16
追加日:2018/04/22
カテゴリー:
≪全文≫

●イギリスのEU離脱交渉はまだ成立していない


 島田村塾でドイツを訪ねた時、ドイツの人たちがブレグジット(BREXIT)をやゆしていたことが印象的でした。EUの交渉員とイギリスの交渉員が3人ずつ、テーブルに向かい合っている写真が新聞に載っていたのですが、EU側は大量のペーパーを持っているのに対して、イギリス側はペーパーを1枚も持っていません。ドイツの人たちは口をそろえて、言っていました。「イギリスにブレグジットはできない。彼らは何も分かっていないし準備もしていない。いずれロンドンはフランクフルトにやって来るだろう」と。

 それでもテリーザ・メイ首相は、EUの単一市場から脱退し、移民制限をして、世界中と友達になって真のグローバルブリテンをつくると主張していました。2017年3月29日にEU離脱をEU側に伝えてから、約1年がたとうとしています。しかし、離脱交渉はまだ成立していません。


●イギリスはEU側から離脱条件を提示された


 イギリスはEU側から離脱条件を提示されました。その条件は3つです。第1に、ブレグジットビル、つまり離脱のための請求書の支払いです。イギリスは、EU予算の未払い分やEU官僚の年金負債などを支払わなければいけません。EU側としては、これはイギリスの借金なのだから支払って当然だと考えています。当初、その額は日本円で8兆円にも上りました。しかし交渉の末、2017年12月にはようやくメイ首相が折れて、400から450億ユーロ(約5~6兆円)を支払うことになりました。詳細はこれから決めるということですが、当初のおよそ2割引きです。

 第2の条件は、在英のEU市民の権利と、在EUの英国市民の権利の保護を行うことです。第3の条件は非常に厄介ですが、アイルランドの国境問題です。

 アイルランドは17世紀から宗教戦争を繰り広げてきました。アイルランドはイギリスの西側にある大きな島ですが、北アイルランドのほとんどがプロテスタントなのに対して、南アイルランドはカトリックです。彼らはずっと争っており、第1次大戦後には南アイルランドが今のアイルランド共和国になりました。北アイルランドはイギリスの領地です。南アイルランドは大英連邦の一国でしたが、今は独立国です。北アイルランドと南アイルランドの間には国境がありますが、そこには検問所はありません。

 しかし、イギリスがEUから離脱することにともなって、いろいろと問題が...
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