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なぜ西洋文明の起源はギリシアにあったとされているのか

西洋文明の起源から見るグローバル化(3)学問の起源

納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科 研究科長・学部長・教授
概要・テキスト
西洋文明とグローバル化を考える上で、ギリシアが起源とされる「学問」の果たした役割は大きい。ルネサンス以来、何度も繰り返しギリシア・ローマの古典を再生する運動が、西洋では繰り返された。人文系と自然科学を問わず、それらの学問の成立と普遍化について探っていく。(全6話中第3話)
時間:10:49
収録日:2019/05/29
追加日:2019/08/01
≪全文≫

●西洋文明やヨーロッパはギリシアから始まったといわれている理由


 それでは、西洋文明をさらに深く考えていくに当たって、古代ギリシアという世界の持っていた意味を考えていきたいと思います。

 「西洋文明の起源(origin)がそこにあった」とよく言われますが、単純に考えて「どうして?」と思われるはずです。なぜならば、ギリシアに文明が芽生えるさらに2千年ぐらい前からエジプトやメソポタミア文明があったからです。それらの地域とギリシアは非常に近い場所で、ギリシアから見れば先進文明に当たります。

 ところが、西洋文明やヨーロッパは、エジプトやメソポタミアから始まったとはいいません。それはなぜかということを考えていきます。

 最初に申し上げたように、西洋の持っている「古典」というものは、「そこに戻って、それを模範として、それを自分の中に吸収していく」という意味です。この意味においてギリシア・ラテンだけが古典なのであり、エジプトやメソポタミアは古典とは呼ばれません。

 これがヨーロッパというものの一つの意味であり、かつ限界かもしれませんが、後のヨーロッパ中心主義につながっていきます。これは、現在の西ヨーロッパや北アメリカなどが「自分たちは西洋文明を担っている」というときに、アフリカや中近東などの要素は入ってこない、ということの歴史的な根っこを形作っているのです。

 例えば、皆さんルネサンスについてはご存じだと思いますが、ルネサンスというのは「再生する」という意味で、後世につけられた単語です。何を再生するかというと、古典です。つまり、ローマやギリシアの文化をもう一回呼び戻し、生まれ変わらせるのがルネサンスの意味です。ルネサンスから始まった近代が現在までつながっているということは、要するにギリシア・ローマのリバイバルが続いているということですね。「もう一度ギリシア・ローマに戻れ」という運動は18世紀や19世紀にも起こり、そのことが繰り返し行われてきました。


●ギリシアに始まったさまざまな学問


 起源(origin)を単にイメージの問題と捉えず、現代まで具体的にどうつながっているかを考える上で、古典の中で「学問」と呼ばれるものが受け継いでいるものについて考えていきたいと思います。

 これは、西周が19世紀半ばにヨーロッパへ行って、学ぼうと思ったさまざまな学問のどれを見ても全部ギ...
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