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経済危機への対応として有効な「総需要拡大政策」とは

新型コロナウイルスと経済問題(3)負の連鎖を止めるため

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
新型コロナウイルスがもたらす経済不況の大きな要因は、借り入れの不良債権化や総需要の落ち込みである。これを防ぐためには、政府による抜本的な経済政策と国際協調が求められる。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:11
収録日:2020/03/12
追加日:2020/03/29
≪全文≫

●疫学的データと経済的データのバランス


――そうした意味では、非常に複合的な視点が必要だということですね。病気のことばかりを考えてもいけないし、経済のことばかり心配していてもいけない。先生がおっしゃったように、データに基づいたバランスのある見方をして、対処していかなければならないということですね。

柳川 そうです。ですから第1に、できるだけ科学的なデータに基づいて、判断をする必要があるでしょう。当然、感染がどう広がるのか、どこまで人の移動や行動を制限すれば、どこまで感染を防げるのかということについても、専門家の方々がご苦労されて、データを集めています。それは100パーセント分かるわけではありませんが、できるだけ把握することが試みられています。経済的なインパクトのほうも、どのような経済的な制限をした際に、どのような経済全体への影響がもたらされるのかを、科学的にデータを使いながら考えていかなければなりません。

 そこで、経済学者として貢献していかなければいけないと思っているのですが、第2として、同じように経済活動を制限したときにも、そこから負の連鎖が起きてしまい、供給側や需要側に悪い影響を及ぼしてしまう場合と、多少はそうしたインパクトがあるにせよ、できるだけ負の連鎖が起きずに済む場合とがあるということです。これは、新型コロナウイルス問題の対策とは別に、経済対策・経済政策としてできることがあるはずです。そこをできるだけ、うまくやっていくことが求められます。

 もちろん、対策といっても万能薬ではないので、副作用もあり得ます。例えば緊急融資自体は、本当に困っている人に必要な金額を配れれば良いのですが、そうならず、だれにでも配るということになってしまうと財政的に苦しい状態を導きかねません。場合によっては、そのためのお金が余りすぎてしまい、無駄に使われてしまうこともあるでしょう。本当に必要でない人にお金が配られてしまうという状況もあり得ます。この点は工夫をして、起きてくる経済的な副作用をできるだけ防ぎながらうまく負の連鎖を防ぐことが、これからの課題です。


●負の連鎖をどうやって止めるかが重要となる


―― 今おっしゃった経済的な課題としては、負の部分をどのように止めるかという部分の他に、うまい形で今回のウイルスの危機がある程度終息した際に、そこからどうやって経済を上向...
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