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新型コロナへの中国の対応は今後のモデルケースになるのか

新型コロナウイルスによる世界変動(5)中国の措置の是非

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
中国が新型コロナウイルスに対して取った措置は、果たして今後のモデルとなり得るのか。民主主義国家の場合、権威主義体制の国家とは異なり、プライバシーや人権に配慮した対策を取らなければならないため、中国のような措置は取れないが、学べる部分もある。それは何か。米中対立、世界の安全保障問題と合わせて議論する。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:35
収録日:2020/04/03
追加日:2020/04/29
キーワード:
≪全文≫

●中国の権威主義的措置はお手本になるのか


小原 前回お話したことを踏まえると、中国の権威主義体制が望ましい国家モデルになり得るのかということは、論点になってくると思います。

―― 民主主義国家では、前回おっしゃった学校閉鎖などの3つの介入が行われています。それに対して中国は、全土に監視カメラが張り巡らされた社会なので、誰が発熱しているかなどを全て把握し、どこに濃厚接触者がいるのかも、ネットワークの中で把握できます。さらに、人々の行動もWeiboというアプリで登録させるなどして、完全な封じ込めを行いました。中国はこうした体制が取れていたからこそ、ウイルスとの戦いに勝てたのだと、今後主張されるかもしれません。前回のスペインインフルエンザの報告書と比較すると、こうした施策は新たなモデルになるのでしょうか。

小原 モデルになり得る部分となり得ない部分があると思います。モデルになりにくいのは、民主主義国家が保障する人権やプライバシーなどに強く抵触するような手段だからです。今回、中国がそうした手段を取ったことは効果的だったとは思うのですが、民主主義国家では、それはできません。例えば、禁足のような容赦のない検疫は、当時、中国でも関連の動画が出回っていましたが、車から人を引きずり出して消毒するなど、かなり強制的なものです。隔離も同様です。

 医療体制に関しても、対応できなくなると仕方ない部分もありますが、体育館のような場所にプライバシーもない状態で人が詰め込まれるケースもあります。途上国の場合、医療が整っていないとこうなってしまうこともあるのですが、人権問題とは別個に、感染症を防ぐのに十分な施設があるのかという問題とも関わってきます。日本でも、医療現場が持ちこたえられずに、設備面から崩壊してしまう可能性を最も恐れています。そのため、軽い人は自宅や指定のホテルなどで様子を見ることが推奨されています。こうしたことが許されるかどうかがポイントになるでしょう。

 ただ、イタリアなどを見てみると分かるように、設備や能力がある一定のレベルに到達していなければ、医療崩壊は免れません。しかし、そうした状況は国家に能力がないからなのか、能力があろうとなかろうとせざるを得ない対応なのか、という違いはあると思います。


●各国で医療水準は異なるが、中国の措置には学べる部分もある


小原 さ...
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