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文学なき「やる気」は、振り込め詐欺のごとき愚劣なものになる

真のやる気とは何か(10)旧制高校出身者がいた時代の良さ

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
キリンビールの現場にいた田村潤氏は、ちょうど日本がバブルに沸き立つ前後から、社内会議の質が急激に低下するのを実感したという。それ以前と以後の違いは、「旧制高校出身者の有無」だった。執行草舟氏はその事実を、文学と哲学の喪失と指摘する。文学のない「やる気」は、振り込め詐欺のような、浅ましいものに直結しかねないのだと。果たして、現代日本に生きる私たちのとるべき方策とは?(全14話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:08
収録日:2020/04/10
追加日:2020/09/04
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●日本がおかしくなったころ、第一線からいなくなった人々


田村 ただ、一部上場企業などは利益からスタートします。投資家が見ているのは数字ですから。それは数字なのですが、大事なのは、数字そのものではなく、数字の意味ですよね。たとえば、「ラガーを何ケース売る」「グリーンラベルを何ケース売る」という数字ではなく、「このグリーンラベルという商品の良さを多くの人に理解してもらって、飲んでもらって、幸せになってもらう。そのための数字なのだ」というように、数字の意味をはっきりさせて、そこへ向かわせないと組織は動かない。数字では燃えないですから。

執行 それはそうですよ。

田村 今年頑張ると、翌年もっと高い目標が来ると、みんな思っていますからね。やはり、意味なのです。そのためにも、理念を語っていけばいい。

執行 そうです。そこを、うまくできるかできないかは、人によってありますね。

田村 そうですね。しつこさが大切ですね。

執行 あとは、哲学があるかないか。僕は無謀なことばかりいうほうですが、僕がいう「無謀なこと」はだいたい通る。なぜ通るかというと、自慢ではないのですが、思想に厚みがあるのです。おそらく、言葉に「迫力」というか「力」というか、何かがあるのだと思う。田村さんも高知支店で通ったということは、何かを背負っていたのです。背負っていない人間がいっても駄目ですから。田村さんのなかで、理念が熟成していたのだと思います。おそらく、そうです。

田村 日本の企業がずっと下り坂なのはなぜか。キリンのなかにいて強く感じていたのは、戦前の旧制高校出身者の存在です。当時、私が入社したころの課長連中はみんなそうでした。彼らが、定年でいなくなったあと、会議のレベルがすごく下がった感じがするのです。議論の厚みがなくなってしまったのです。

執行 それは気がするのではなく、本当にそうなったのです。

田村 旧制高校がすべて良いかどうかはわからないのですが、少なくとも、世界にはいろいろな考え方や哲学があることを、彼らは知っていたのです。

執行 旧制 高校が何を象徴しているかというと、哲学と文学。旧制高校の1つ良かったところは、とにかく大学の専門が全部別で、医学部だろうが、理工科だろうが、経済だろうが、法科であろうが、文学だろうが、どんなものでも、ヨーロッパでいう「リベラルアーツ」、つ...
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