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学問をすればするほど、深く広く知る楽しみは生涯続く

渡部昇一に学ぶ教養と明朗(10)本と学びと人生を愛する力

概要・テキスト
本を買ったのでお金がない。本が積み上がって置き場がない、床が抜けてしまう……。本は、所有者を困らせることばかり。しかし、だからこそ、本の所有者は、本によって「自分の人生を愛する力」を手にすることができる。「この本を買ったのは、いつ頃」「あの本を読んだのは、こんなときだった」など、思い出を本と共に蓄積していくことができるからだ。便利さを追求する生活は人間から知性を除き、ひいては愛も抜いてしまう。逆に、西田幾多郎も喝破したように、知性の極まるところが愛なのである。そして、読書や学びは、死ぬまで尽きせぬ楽しみを与え続けてくれるのである。(全10話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:56
収録日:2020/09/09
追加日:2020/12/11
カテゴリー:
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≪全文≫

●本は、置き場に苦労するほうがいい


渡部 それでも一つ、電子書籍でも読んだほうがいいと思うのは、住宅事情で本棚を置けない場合です。昔より本を読む習慣がないうえに、本棚さえ置かない生活が多くなっていますから。しかし結局、電子書籍を読む人は、普段から読んでいる人が多いです。電子書籍から読書家になった人は、あまり聞きません。聞いたことありますか?

―― 電子書籍の歴史がそこまで長くないのもあるでしょうけれども、今のところは、本が好きな方が、まさに場所に困らないというところで、電子書籍に行くということが多いように思います。

執行 それは玄一さんが優し過ぎます。人のそんな事情まで考える必要はないのですから(笑)。本は、困ることが重要なんです。本が困るのは、私もみんなわかっています。私にしても、家の床が全部抜けてきていますから。でもやはり本が好きで、本を集めて家の床が抜けたというのは、私の誇りです。1人の人間の誇りとは、そういう「物自体の力」によってつくられているのです。そういうものが重要だと言いたい。
 だから住宅事情が悪いなら、悪いほうがいいのです。私も今は鉄筋コンクリートで、ある程度大きな家を建て、書棚も整備しましたが、私にとって読書の誇りは、畳一部屋で、地震が来たら死ぬというほど本が積み上がっていた時代です。そうした部屋で「もういつ死んでもいい」という覚悟で読書生活をしていたときが、私の基礎になっていると思います。今のほうがダメです。
 そういう人生体験から見ても本は置き場に苦労する、金も苦労する。本を買って食べ物がないという体験。私自身、本のために別のものを犠牲にすることが、若い頃はすごくありました。

渡部 それは父もよく言っていました。

執行 その体験が、本の良さなんです。だから苦労させなきゃダメなのです。だから、今の便利さばかり追求する生活は、どんどん人間から知性を除いてしまう。
 知性が抜けるというのは、知性だけで済みません。知性は愛の一つの証だから、愛も抜けていきます。最初の西田幾多郎の話で出たように、愛は知の極点であり、知性と固く結びついています。どちらがどちらを生みだすというのは、イタチごっこになってしまいますが。だから知性が抜けていくことは、愛も抜けていくと気づかないとダメです。

―― 表裏一体なんですね。その意味では、これだけの本があ...
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