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国防省主導での連続性・一貫性がトランプ政権の防衛戦略の特徴

米国の対中政策~戦略の現状と課題(3)トランプ政権の安全保障政策の要点

吉田正紀
元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員
概要・テキスト
オバマ政権からトランプ政権への移行期、米国防省が公表した世界地図において、ロシアは「リライジングパワー」、中国は「ライジングパワー」と名指しされ、それぞれ中、長期的に解決すべき課題とされている。国防省とトランプ氏は同じ世界観を共有しているのだろうか。それとも現政権の安全保障戦略は国防省主導によるものか。(全8話中第3話)
時間:11:44
収録日:2020/10/07
追加日:2020/10/20
カテゴリー:
≪全文≫

●2017年に米国防省が予測した「安全保障上の課題」


 スクリーンは、オバマ政権第2期目の2016年2月、ト国防省が公表した世界地図です。2016年の大統領選が終わった翌年である2017年に新政権になることを見込んだ上で「米国の直面する安全保障上の課題」という文書から作成した脅威認識です。一つずつ説明させていただきます。

 まず、ロシアについては「リライジングパワー」と名付けています。冷戦の終結とともにかなり(国力の)落ちていたロシアが非常に復活してきた。ただし脅威の正面は欧州ということで、熊の顔は欧州を向いています。

 もう一つ、急速に伸びてきた「ライジングパワー」が中国です。この龍の脅威は、正面のアジア太平洋に向いて炎を吹いているのかもしれません。ただ、この時点では、まだ尻尾がヨーロッパには届いていないといった認識です。

 また、この文書の中では、ロシアと中国を指して「大国間競争の再来」と言っています。今、トランプ政権で言っている"great power competition"というのは、実はこの時に初めて使われた言葉なのです。

 北朝鮮やイランについては、それぞれ「特定の地域における長年の課題」と言っています。北朝鮮の場合は朝鮮半島と日本を含む東アジア、イランは中東だろうと思いますが、そうした「地域」でずっと棘が刺さったように脅威となっているというニュアンスです。

 さらに当時は、いわゆるISILに代表されるテロリストのような非常に強大な敵と戦っていました。これらは「戦闘中かつ打倒すべき」と名指されています。

 ざっと以上のことを、米国が2017年に直面するであろう安全保障上の課題として予測していたわけです。


●現在の安全保障戦略に連続性・迅速性・一貫性がある理由


 この時点での予測は、2017年に発足する新政権への引き継ぎと言っていいものかもしれません。これが公表された2016年2月の時点では、当然のことですが、ほとんどの人がトランプ大統領の誕生を予測してはいませんでした。もしも民主党政権であれば民主党政権のヒラリー・クリントン氏に大統領の座が移るであろう、といった政権交代をにらみながらのことだったわけです。

 皆さまご承知の通り、米国では大統領が代わると「ポリティカルアポインティー」と呼ばれる高級なスタッフが全て交代するのが原則です。こうなると...
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