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2016年トランプ当選につながる孤立主義復興の契機を追う

“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.2(2)太平洋を越えて中国へと至る

東秀敏
米国安全保障企画研究員
概要・テキスト
アメリカの西漸運動は中西部を開拓し、やがてテキサスやカリフォルニアといった地域まで併合し、太平洋まで到達した。その後、アメリカは奴隷解放後の新たな労働力確保のために、中国市場に進出することを目論む。第一次世界大戦での影響力増加や、第二次世界大戦での日本への勝利を経て、20世紀後半には中国市場への本格進出を果たす。しかし、トランプ政権は中国市場からの撤退と、中西部における新たな産業革命を目指す政策へとシフトしつつあった。(全4話中第2話)
時間:08:10
収録日:2020/06/11
追加日:2020/11/22
カテゴリー:
≪全文≫

●中西部を越えてカリフォルニアまで至ったアメリカ


 実際の西漸運動の戦略的展開は、大陸国家の完成を目指していました。ジェファソンは、米国の歴史の初期段階で大戦略論を展開しました。彼は非介入主義、同盟関係懐疑論、そして反工業化、農本主義、フロンティア開拓を主張しました。その一環として、米国を一大大陸国家にするために西漸運動を計画し、かつ実践しました。

 その成果が1803年のルイジアナ買収で、戦略拠点ニューオーリンズを獲得しました。欧州戦争で戦費に困っていたナポレオンと交渉し、破格の値段で買収しました。さらに、入植者に土地を与え、フロンティア開拓を進めました。この時に西に向かった入植者は、独立13州にうまく適応できなかったスコットランド、アイルランド、そしてドイツ系といった、非アングロサクソン系の人々です。彼らは、ジェファソンの西漸運動の呼びかけに応じて、西に向かったのです。

 カリブ海をアメリカが戦略的に押さえる理論的正当性を与えた、「モンロー主義」という主張があります。その背景には、19世紀初頭には英仏をはじめ欧州列強がまだ植民地を持っており、影響力を残していたことがあります。これに対して、カリブ海はアメリカの勢力圏だと宣言し、彼らを追放する構えを見せました。その究極的な目的は、ニューオーリンズを守ることでした。ニューオーリンズからカリブ海を抜けて大西洋に至るという貿易ネットワークを守るために、モンロー主義という理論を打ち立てたのです。

 初の西部出身大統領となったアンドリュー・ジャクソンは、ニューオーリンズを新興国、メキシコから守るために、当時独立国であったテキサス共和国の併合を提唱し、後のジョン・タイラーという大統領の時代に謀略を駆使して併合されました。また、アメリカ・メキシコ戦争以降、カリフォルニア割譲によって太平洋進出のチャンスを得ることに成功し、大陸国家として正式に成立したのです。


●太平洋を越えて東アジアへの進出を目指す


 多くの場合、大陸国家としてある程度国内経済の基盤ができると、海洋進出を目指します。アメリカもその例外ではありませんでした。アメリカの海洋進出は、フロンティア開拓の延長線上に位置付けられており、中国市場の開拓を常に視野に入れていま...
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