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スサノオなしに日本の祭も歌もなかった

世界神話の中の古事記・日本書紀(5)『古事記』の中のスサノオ像

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
スサノオはスクラップ・アンド・ビルド、つまり世界を展開させていく破壊的な役割を果たすと同時に、世界をつくり上げていく役割も果たす、一番のキーとなる神様だと鎌田東二氏は言う。また、「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」という有名な歌があるが、これはスサノオがきっかけとなって生まれ、それが日本の和歌の始まりだという記録もある。今回は、『古事記』の中でスサノオがどのような神として描かれているのか。その様子を丁寧に解説していく。(全9話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:53
収録日:2020/10/05
追加日:2021/05/01
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≪全文≫

●スサノオの乱暴狼藉で世界危機に


鎌田 スサノオ(スサノオノミコト)の持っていたものは十握剣(とつかのつるぎ)です。それをアマテラスオオミカミに渡して、アマテラスはそれをカリカリと口中で噛んで、そして飛沫(息)とともにサーッと吐く。すると、タキリヒメ、タゴリヒメ(タキツヒメ)、イチキシマヒメといった宗像三神といわれる女神が出る。自分の持ち物(物実)から三柱のうるわしい乙女の神が生まれてきたので、スサノオは「自分の心は優しく、国を奪おうという邪な気持ちはない。それが証明された」と言い、勝ったとします。

 スサノオは、自分の心が清らかで、邪でないことが証明されたと言って大喜びし、勝ちどきを上げて、いろいろな乱暴狼藉を働きます。乱暴狼藉をしたために、アマテラスオオミカミは岩戸にさしこもってしまった。このようなスサノオ像が描かれています。

 スサノオが最後に行った乱暴狼藉が、「天の斑駒(あめのふちこま)」という馬の皮を逆剥ぎにし、血だらけにして、その馬を、アマテラスオオミカミを含め神々に献上するための神聖な神御衣(かんみそ)――いわゆる衣を織るための神聖な機織り場――に投げ入れた。すると皆が驚いて、アメノハタオリメ(若い機織り女)が針でホト(女性器)を突いて、亡くなってしまった。それを怒り悲しんで、アマテラスオオミカミが岩戸に隠れてしまったために、世界が真っ暗になって生存の危機になってしまった。

 地球の危機ですね。光がなくなる、太陽がなくなるのですから。地球上の全ての熱が失われた状態になり、パニックが起こって、さまざまな悪神の災いが起こります。感染症であったり、いろいろなことが実際に起こるということです。冷害で食べるものももちろんなくなるでしょうし、あらゆるものが死滅してしまうという最大の危機に陥った。

 そのときに、神々が天安川(あめのやすかわ)に集まり相談して、ここで祭を行おうとなりました。祭によってアマテラスオオミカミにもう1度復活してもらおう、と。

 そのための祭の手立てとして、忌部氏が神籬(ひもろぎ)を立てて、玉、鏡、四手(しで)などを飾り付け、そして中臣氏、藤原氏の祖先であるアメノコヤネノミコトが厳かに「掛けまくも畏き 伊邪那岐大神(かけまくもかしこき いざなぎのおおかみ)」「掛けまくも畏き 天照大御神(かけまくもかしこき あまてらすおおみかみ)...
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