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世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観

神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
日本の神話と世界の神話とでは、大きく異なる部分も多い。各国、各文化圏の神話は、それぞれにとても興味深い特徴を持っている。この講座では、その違いから日本の本質に迫っていく。第1話で語られるのは、神話はなぜ奇想天外な話に満ちているのか、である。その理由ともいえる見解の一つに、神話とは「神々の踊りである」という話がある。それはどういうことなのか。自由自在にナラティブ(物語)を語ることができる神話の背景に迫る。(全8話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:16
収録日:2020/12/07
追加日:2021/09/19
≪全文≫

●神話は「踊り」である


―― これまで(シリーズ講義<世界神話の中での古事記・日本書紀>では)『古事記』と『日本書紀』、それから『古語拾遺』の違いについて、ご解説いただきました。今回からは、世界神話の中で日本神話がどのような位置づけなのかについて、お話を聞きたいと思います。

 神話といえば、「世界の成り立ち(どうやってこの世界ができたのか)」を説明するものでもあります。それが神話ごとにどう違うのかについて、ぜひ教えていただければと思います。

鎌田 「世界の成り立ち」について話す前に、私は最近、ジョーゼフ・キャンベルという神話学者の『神話の力』(早川書房)を読み返していました。これは対談集で、ビル・モイヤーズとジョーゼフ・キャンベルが対話しながら、英雄神話など世界中の神話が持つさまざまな面白さやキャラクター、構造などについて述べています。その冒頭で、インタビュアーのビル・モイヤーズが、この本とジョーゼフ・キャンベルについて紹介しつつ、次のように述べています。その『神話の力』の一節を紹介するところから始めましょう。

 ある国際的な宗教会議のために日本を訪れたキャンベルは、別のアメリカ代表であるニューヨーク州出身の社会哲学者が神道の司祭にこう言っているのを立ち聞きした。「私たちはたくさんの儀式に参加したし、あなたがたの神殿もずいぶんみせていただいたが、そのイデオロギーがどうもわからない。あなた方がどういう神学を持っておられるのか、理解できないのです」。

 すると相手の日本人は、考えにふけるかのように長い間を置き、ゆっくりと首を振ってからようやく言った、「イデオロギーなどないと思います。私どもに神学はありません」。では何があるのかというと、その方は「私たちは踊るのです」と言ったというのです。

―― 「踊るのです」というのは面白い表現ですね。

鎌田 「踊る」は英語で言えば「dance」になるのでしょうが、ここでは例えば神楽や巫女舞といったものでしょう。

 神社で行われる重要なことは、大きく3つあります。神様にお供え物をする、神様に祝詞を奏上する、そして神様を喜ばせるための感謝や報恩、祈りなどのこもった神楽や舞を奏するといったことです。それらを総合して「私たちは踊るのです」と言ったのだと思います。つまり、私たちが行うこと...
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