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ミルトン・フリードマン…金融政策の復権と自由市場の重要性

本当によくわかる経済学史(13)20世紀最大の経済学者フリードマン

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
ミルトン・フリードマン
出典:Wikimedia Commons
大恐慌の後、ケインズ的な「大きな政府」が主流だったところに登場したのが、ミルトン・フリードマンである。彼は過去のデータや歴史的実例に基づいて理論を検証し、改善していくという「実証主義」を唱えた。そして、ケインズ政策でいわれる「乗数効果」が必ずしも成り立たないことも解き明かした(恒常所得仮説)。フリードマンの分析はこれまで「つじつま」が合わなかった部分を、うまく説明できた。金融政策と自由市場の重要性を説いた彼の理論は、広く受け入れられるようになっていく。しかし、反対論者からの攻撃を受け、誤解されていることも事実だ。それはなぜか。彼の具体的な理論とともに解説する。(全16話中13話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:33
収録日:2022/06/08
追加日:2023/03/01
≪全文≫

●「大きな政府」に異を唱えたフリードマン


―― ナチスや共産主義にせよ、ケインジアンにせよ、戦後の大恐慌以降は「大きな政府」の傾向が続くことになります。流行り、と言うと怒られるかもしれませんが、それが1つの潮流になってくるわけですね。それに異を唱えたのが、ミルトン・フリードマンです。

柿埜 先ほどもお話ししましたが(第11話)、オーストリア学派の人たちはこの間もずっと異議を唱えてはいます。けれども、もはや誰も見向きもしない少数派に転落してしまったのです。大学に就職するのも苦労するようなレベルにまで落ちぶれてしまって、全然相手にされなくなってしまいます。

 そのような中で、「自由市場はやはり大事だ。政府が介入したら最終的にうまくいく、などということはない」ということを指摘したのが、20世紀最大の経済学者ともいえるミルトン・フリードマンです。

 フリードマンはどうやって「政府介入がうまくいかない」ことを主張したか。これは非常に簡単です。実際のデータや歴史的事実を見て、それを統計的に検証し、うまくいっていないことを示したのです。

―― 実証主義ということですね。

柿埜 そうです。フリードマンの大きな特徴は、抽象的な理論(地に足のついていないような理論)を唱えるだけではなく、それが実際に使えるかどうかという「経済学は現実を改善するための道具だ」という発想でものごとを見ている点です。彼は、歴史的な実例などを見ながら、実際に政府が介入してうまくいっていないことを示していきました。

 フリードマンは、シカゴ学派という、シカゴ大学を中心とする経済学者のグループの一員です。これはある意味で「シカゴ的な伝統」ということができると思いますが、現実の経済政策に生かすために事実を検証した上での理論が、彼の理論です。後で言いますが、これはオーストリア学派とかなり違う点です。

―― オーストリア学派はどちらかというと、思弁的、哲学的だったということですね。


●恒常所得仮説――公共事業の経済効果は大きくない


柿埜 フリードマンの研究は、イデオロギー的な何かというよりも、普通にやっていったらそうなるという話です。ケインズ的な発想では、「政府が支出を増やせば、その支出を受け取った人たちは――例えば公共事業を行って、その公共事業の給料を受け取っ...
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