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国譲りによる平和…国作りをした大国主神の深い協力とは

大国主神に学ぶ日本人の生き方(7)世界でも稀なる「国譲り」

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』(鎌田東二著、春秋社)
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国作りを果たした大国主神は、やがて「国譲り」に直面する。だが、争いを起こさずに国を譲った大国主神は、その後も生き延び、祀られ続ける。これは、世界の神話には見られないこの日本神話の特徴といえるものであり、そこには深いコワーキング、コーポレートの姿がある。その世界的に不可思議な大国主神の「国譲り」について、前回に続き鎌田氏の詩の朗読をもとに見ていく。(全9話中7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:45
収録日:2023/08/08
追加日:2024/01/21
キーワード:
≪全文≫

●破壊では終わらない。大きな甦り、循環や修理固成が生まれる。


―― また詩でございますが、先の部分のほうに進んでいきたいと思います。先生がご解説くださったうちの、これは2つ目のパートですね。

鎌田 たすけ

おほくにぬし
大国主の神

たしかに
あなたの名前は雄大であるが
しかし
あなたほど弱い神はいなかった

あなたは 最強の神スサノヲの子孫の中で 最弱の神だった

だが そんな最弱の神であるあなたが スサノヲの霊統を受け継いだ
スサノヲの衣鉢を継いだ

スサノヲの霊統とは
傷む神であること
傷み 痛み 悼む神であること
そのいたみとかなしみが うたとなる

歌う神
あなたに宿命づけられた霊性とは
そんな歌う神の霊統であった

父祖スサノヲの場合
その歌の始まりは喪失にあった

 この後どのように続くかというと、お母さんを失った。お母さんを失って泣き叫んでいる、その泣き叫び、悲しみを、父も姉もよく理解しなかった。その理解されなかった悲しみが暴力にもなって、粗暴な振る舞いにもなっていくという構造で、いってみれば不良少年の原形的な物語です。

―― 誰にも理解されないというところからだと。

鎌田 僕は誰にも理解されない。独りぼっちだという孤独感や孤立感のようなものが暴力になっていく。暴力が外に向かう場合もあれば、自己に向かう場合もあります。そういう暴力的なものが生まれてくるということです。

 これはある種、普遍的な構造を持っていると思うのです。ダメージを受け、傷ついた自分を建て直していくためには、何らかの形で荒ぶりが生まれてくる。その荒ぶりが、内にも外にも向かって攻撃性になってくる。それはある種の残虐なふるまいを生み出す。破壊も生み出す。

 でも、破壊で終わるわけではない。そこをどうやって通過するかによって、大きな甦り、循環や修理固成が生まれる。スサノヲの場合は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治することによって、その心が晴れていき、犠牲になろうとしていた寸前のクシナダヒメを助けたわけです。助けることによって自分も救われていくわけです。そして歌うことによって、その浄化がさらに完成していく。そういったプロセスを辿っていくスサノヲ神話が持つメッセージ力も非常に重要なのですが、そのスサノヲの直系がさらに次のバリエーション...
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