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「和歌みくじ」で運をつかむ…現代に息づくおみくじの知恵

おみくじと和歌の歴史(5)現代の和歌みくじ

平野多恵
成蹊大学文学部日本文学科教授
概要・テキスト
『おみくじの歴史 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか(歴史文化ライブラリー583)』(平野多恵著、吉川弘文館)
平野多恵氏提供(吉川弘文館より)
明治時代に入り、おみくじは大きな転換期を迎える。神仏分離令を契機に、江戸の歌占とは違う新しい和歌みくじが作られるようになるのである。その流れで現代に至るわけだが、注目したいのが明治神宮の和歌みくじだ。神道学研究の第一人者が監修したこのおみくじには吉凶がなく、明治天皇の御製と昭憲皇太后の御歌だけでできている。明治神宮のおみくじの意義とはいかなるものか。さらに、平野多恵先生ご自身が監修した「天祖神社歌占」と「千年和歌みくじ」、さらに歌占を現代的にアレンジした「歌占カード」を取り上げながら、現代の和歌みくじについて解説する。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:13
収録日:2023/11/10
追加日:2024/01/17
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≪全文≫

●神仏分離令が契機――明治時代の和歌みくじ


―― 平野先生、今(第4話では)、江戸時代における歌占本(うたうらぼん)の流行について教えてくださったわけですけれども、明治維新以降、それがどのように変わっていくのでしょうか。

平野 実は先ほど(第4話で)ご紹介した漢詩みくじは、漢詩の「観音籤(かんのんせん)」とか「元三大師御籤(がんさんだいしみくじ)」というのですけれども、その漢詩みくじはすごく江戸時代に流行っていて、神社でも当時、今と違って神仏習合で、神社をお坊さんが治めていたりですとか、あるいは、お寺の中に神社があったりとか、そういった神仏習合は普通だったのです。

 それが明治維新になって、神仏分離ということで、神社は神社、お寺はお寺という神仏分離令が出されたのです。それによって、それまでは神社でも仏教の漢詩みくじを使っていたところはけっこう多かったみたいなのですけれども、神社は神社のおみくじを新しく作らなければいけないというような流れになってきて、それで、和歌みくじが江戸の歌占とは少し違う新しい和歌みくじとして作られるということになっていきました。

―― はい。先生にまたこちらも貴重なご本をお持ちいただいたのですけれども、こういうご本ですね。これは何のご本になるのですか。

平野 これは明治3年に作られた新しい和歌みくじの本なのです。『神籤五十占』といって、1番から50番まであるのですけれども、国学者が出雲大社にこもって、神様のお諭しの歌をいただいたと書かれています。

 これまでは神社でも仏籤、つまり漢詩みくじを使っていたのだけれども、明治のご維新があって、神様のおみくじを作らなければというので作られたものです。これは実は今も、例えば東京であれば王子神社ですとか、あるいは京都だったら吉田神社ですとか、いろいろなところでこのおみくじの歌が使われています。

―― 中を読みますと、ちょうど今開いたところが「第二十七号吉」とあったりしますけれども、最初に和歌が書いてあって、いろいろと、まさにおみくじのようなことが書いてあるのですね。

平野 そうですね。このお諭しの御歌は、ということで、どういう意味があるのかということが書いてあって、あとは、悦び事などの項目ごとです。訴訟とか、いろいろな項目が書いてあります。


●神道学研究の第一人者が監修した明治神宮の和歌みく...

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