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がん治療にも応用、オートファジーによる疾患制御の方向性

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(5)オートファジーと疾患の関係

水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授
概要・テキスト
オートファジーは人間の疾患とどのように関係しているのか。大隅良典氏の研究を皮切りに、急速に発展してきたオートファジー研究だが、その研究成果は医学の分野において、薬剤の開発やがん治療への応用など、新たな手法を生み出し得る貴重な知見となる。例えば、パーキンソン病やALS(筋委縮性側索硬化症)、アルツハイマー病など、現時点では治療が困難な疾患に対して、オートファジーを使い、それを制御するための試みが最前線で展開されている。その詳細と今後のビジョンについて解説していく。(全5話中第5話)
時間:14:18
収録日:2023/12/15
追加日:2024/04/14
≪全文≫

●疾患の原因となる遺伝子からオートファジーとの関係を探る


 それでは、最後のパートでは、オートファジーが人間の疾患とどのように関係しているかということと、今後のビジョンについて、ご説明していきたいと思います。

 まず、オートファジーと疾患との関係を考える上で、とても大事なことは、オートファジーの活性をどうやって調べるかということになります。

 ところが、これは実は非常に難しい点です。実験室で培養しているような細胞では、まだやり方は複雑ではありますけれど、今はなんとか、オートファジーの活性を知ることは可能となってきています。ところが、動物だったり、人間から取ってきた標本でオートファジーがどのくらい活性があるかということを調べるのは非常に困難です。

 一部は、このように(スライドにあるように)オートファジーの活性を表すようなレポーターの遺伝子を導入させてもらえれば、オートファジーの活性を知るということはできます。けれど、そのような遺伝子導入ができない、実際の生身の人間では、今のところオートファジーの活性を知ることはほぼ不可能といっていいかと思います。これが今、オートファジーと医学の関係を結び付ける上では非常に大きなボトルネックとなっていて、これを解決する必要があります。

 これが分からないと、人とオートファジーの関係が分からないかというと、実はそうではなくて、今、多くの人の病気、特に遺伝病では、その原因となる遺伝子が次々見つかってきています。そうしますと、そういう遺伝子の中にはオートファジーに関係する遺伝子も含まれてきますので、そういう病気はオートファジーと関係する可能性があるということとなります。

 これはその1つの例ですけれど、「BPAN」または「SENDA」と呼ばれている、非常に稀な神経疾患です。この疾患で、オートファジー遺伝子の1つである「WDR45」に変異があることが分かりました。この病気は二つのフェーズがありまして、だいたい20歳くらいまでは、この動画に示しますように、実際に歩くことができますけれど、知的障害がとても重くて、ほとんどしゃべることはできません。その後、ほぼ全例で、30歳くらいを過ぎると、この右の動画のよ...
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