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ドラッカーの名言「すでに起こった未来」…ドローンの今後

ドローンが拓く「空の産業革命」(6)ドローンの未来

鈴木真二
東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長
概要・テキスト
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、新技術導入の成功例・失敗例を振り返り、今後のドローンのあり方について解説する。将来、ドローンが全面的に実用化されれば、社会がより便利なものになると期待が高まっている。そのためには、過去の事例によく学び、安全な飛行技術やルールの検討が欠かせない。(全6話中第6話)
時間:09:30
収録日:2017/07/10
追加日:2017/09/05
≪全文≫

●赤旗法が自動車産業の発展を阻害した


 新しい技術を導入するに当たって、注意しなければいけないことがあります。私たち人類がかつてそうした際にうまくいった例やうまくいかなかった例から、多くのこと学ぶ必要があるでしょう。

 19世紀中頃、蒸気自動車が開発されました。しかしイギリスでは、蒸気自動車が市内を走ると危険だということで、市街地では時速3.2キロ、郊外でも時速6.4キロの速度制限がかかりました。さらに、市街地を走る場合には、前方に赤い旗を掲げた人が歩かなければいけないという、いわゆる赤旗法が制定されました。

 これは、自動車の利用を阻害するものであると同時に、自動車産業の発展をも阻害したといわれています。イギリスではなく、大陸のフランスやドイツで自動車産業がいち早く発達したのは、イギリスでこうした悪法が作られたことも関係しています。


●アメリカでは飛行機の利用に補助金が出された


 一方で、新しい技術が新しい制度によって発展する、という事例も見られます。第1次世界大戦中には、多くの飛行機が利用されました。これは軍事技術として開発されたのですが、戦争が終わればその目的はなくなります。しかし、ヨーロッパでは鉄道網が戦争で破壊されていたため、人や物を運ぶ手段として、飛行機がいち早く使われるようになったのです。反対に、戦場にならなかったアメリカでは、鉄道網が発達したため、飛行機を利用する人はほとんどいませんでした。アクロバット飛行の見せ物としてしか、飛行機の利用価値はなかったのです。

 こうした状況では航空産業の発展は見込めないということで、アメリカでは郵政省が中心となり、郵便物を運ぶために飛行機を利用すれば補助金を出す、という制度が作られました。ただ、初期に採用されたパイロットの多くは、事故で命を落としてしまいました。そうした悲惨な事故もありましたが、こうした事業を通じて飛行機が発達し、現在私たちは飛行機を便利に使えるようになっています。

 確かに、無人機という新しい技術も、やはり安全を確保した上で使わなければいけません。しかし、その規制が厳しすぎてもいけませんし、緩すぎてもいけません。このことを歴史から学ぶべきだと思います。


●未来を予測するには「すでに起こった未来」を見よ


 今後、無人航空機が私たちの社会を大きく変えてくれるのではないかと、期待が...
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