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ブロックチェーンを用いた新しいビジネスモデル

今後の技術革新と企業経営(7)ブロックチェーン技術

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
ブロックチェーンは、記録を改ざんされず安いコストで残せる技術である。このブロックチェーン技術が、自動契約プログラムであるスマートコントラクトやIoTと結び付くことでビジネスモデルが変わると、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は言う。(2018年4月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「今後の技術革新と企業経営」より、全8話中第7話)
≪全文≫

●ブロックチェーンは、改ざんされない記録を安く残せる技術


 最後には、ブロックチェーン技術の話をします。実は今、すごく注目されている技術です。

 以前、日本でもブロックチェーンに関するイベントが開かれました。ダボス会議(世界経済フォーラム、スイスのダボスで開催)も、2017年にはAIがメイントピックだったのですが、2018年にはAIが影を潜めて、ブロックチェーンがメイントピックになりました。

 ブロックチェーンは、ビットコインを支える基礎技術ではありますが、ご存じの通り、仮想通貨だけに使える技術ではありません。その技術は、さまざまなビジネスに使うことができます。

 ブロックチェーン技術のポイントは、改ざんされない記録をネット上に残すことができ、そして、その記録を誰もが確認することができる、という点にあります。テクニカルな話をすれば、いろいろな暗号技術などを使います。

 もちろん今でも、改ざんされない記録を残すことは可能です。例えば、全銀ネットでも改ざんはされません。ですが、従来、改ざんされない記録をどこかに残すためには通常、ものすごい設備投資が必要で、大きなセキュリティーコストがかかっていました。それに対して、ブロックチェーン技術は、非常に安いコストで、改ざんされない記録を残せます。そこにポイントがあるのです。ですから、この技術を生かすビジネスモデルがいろいろと出てくるはずです。

 ただし現状に関していえば、ブロックチェーンはまだ発展途上の技術です。低コストで極めて安全なものを作ることはできるのですが、そうするとスピードが落ちてしまいます。逆にスピードを速くしようとすれば、安全性が欠如することになります。


●ブロックチェーンを用いたビジネスモデルはすでに登場している


 このように、速くて安くて安全であるという、3拍子をそろえることはなかなか難しい。ここに今のところジレンマがあります。ですが、あまりスピードを要求されないような記録に関しては、安全で安いものを作ることができるので、とてもいいビジネスモデルだといわれています。

 私がよく例に出すのは、イギリスで実際に行われている、ダイアモンドの記録をブロックチェーン上で残しておくというビジネスです。ダイアモンドには、まがいものがいっぱいあります。そこで鑑定書などを付けるのですが、それでもまがいものが多いと...
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