●小選挙区制だけでなく、比例代表制を導入した効果も大きかった
政治改革は、目指す方向に向かいました。ちなみに、選挙制度改革は当時政権を取れない野党が選挙に勝つために提言したものではなく、自民党が進めました。
この改革は後藤田正晴氏(元副総理)や小沢一郎氏が進めていきました。小沢氏の場合、野党側についた際にも政権を取れるように、と考えていたかもしれませんが、後藤田氏の場合はそうではないでしょう。ですから、後藤田氏にはご存命の間に、あの改革によって自民党が政権を失っても良いのだ、という覚悟で取り組んでいたのか、念押しで聞いておきたかった。
日本に特徴的なのは、野党側が選挙制度改革を言い出さないということです。政権交代は責任政治を意味しますが、日本では長い間、一党優位制ともいえる、自民党の単独政権時代が続きました。しかし、選挙制度改革以降は全て連立政権です。民主党が政権を取った時も連立でした。現在の自民党政権も連立政権です。連立が通常状態になりました。
派閥の影響も、今は昔ほどありません。派閥で総裁を決めることがほぼできなくなりました。また、選挙にお金がかからなくなりました。昔は、今のように2000万円ほどで当選することはあり得ず、自民党同士の競争で億単位のお金が使われていました。
さらに、選挙の際には公認が非常に重要になりました。以前のような5人区、4人区、3人区による中選挙区制の場合、無所属の立候補でも有効でした。なぜなら、無所属で当選したら、自民党にくら替えすることもよく行われていたからです。しかし、小選挙区制の下では、選挙区に1人しか候補者を出さないため、与党側も野党側も公認を与えます。特に与党の場合、自民党と公明党がそれぞれ1人ずつ1つの選挙区に立候補させることはあり得ません。だから、候補者は公認を受けた1人でなければなりません。
同時に、比例代表制を導入したことの効果が非常に大きかったということも、忘れてはなりません。選出議員全体の約40パーセントが比例代表選出であるため、制度設計の際にどのようなことが考えられていたのかを、振り返ることが重要です。
●比例代表制導入の効果は、事前に検討されていた
このスライドの内容は、第8...