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ディープテックのシンボルとして自動運転の民主化を目指す

「自動運転の民主化」が生み出す近未来の社会(1)自動運転の民主化と大学発べンチャー

加藤真平
東京大学大学院情報理工学系研究科 特任准教授/株式会社ティアフォー 創業者
概要・テキスト
「自動運転はディープテックの一つのシンボルではないか」――ディープテックとは、それが実現されれば社会が変わるものを総称した呼び方だが、自動運転はそれぐらい大きな社会的インパクトを与えるテクノロジーだということだ。現在、社会実装に向けて自動車メーカーだけでなく、べンチャー企業いわゆるスタートアップが研究開発を行っている段階で、中でも加藤氏が創業した大学発べンチャー「TierIV」もその一つだ。「自動運転の民主化」というビジョンを掲げるTierIVの活動を通じて、自動運転の開発状況と社会実装に向けた取り組みを追う。(全5話中第1話)
時間:11:19
収録日:2020/11/25
追加日:2021/04/01
タグ:
≪全文≫

●「自動運転の民主化」というビジョン


 東京大学の加藤真平です。自動運転は、昨今研究の領域から先行開発の段階に移ってきており、今後5年から10年の間には普及していく技術だと考えています。今日はその開発の状況や、開発から社会実験、社会実装に移っていくような試みが国内外で行われていますので、今回のシリーズではその一端を紹介させていただきたいと思います。

 開発に関しては自動車メーカーや大手企業なども参入してきていますが、現段階では大学の研究をべンチャー企業、いわゆるスタートアップが、社会実装に向けて今まさに研究開発を行っているという段階です。私が大学発のべンチャーとして5年前に創業した「TierIV」という会社が、どのような経緯で活動してきたのか、これから何を目指していくのかを、最初に紹介させていただきたいと思います。

 TierIVは、「ディープテック」と呼ばれる将来的に大きな社会的インパクトを与えるテクノロジーを開発しています。現時点ではテクノロジーは開発されていないので、社会に何らのインパクトを与えるものではありませんが、これが実現されれば社会が変わるというものを総称して、「ディープテック」と呼んでいるのです。自動運転は、このディープテックの一つのシンボルではないかと思っています。

 TierIVという会社は、もともと私が名古屋大学に在籍していた際に創業した大学発べンチャーです。今でこそ大学発べンチャーは増えてきましたが、創業した5年前はまだまだ夜明け前という段階でした。

 われわれは大学の研究成果をべンチャーに生かしたいという動機からスタートしているので、ビジョン、すなわち自分たちの実現したい社会に向けて、どのような方法論、理念で進んでいくのかという点に関して、少しアカデミックな特性を持たせています。それをわれわれは、「自動運転の民主化」と呼んでいます。

 自動運転に限らず、これまでのテクノロジーの開発は主に、企業が個別に行ってきました。対して、TierIVの考え方は、テクノロジーを民主化する、自動運転の技術を民主化するということです。

 これはどういう意味かというと、一社で開発を行うのではなく、自分たちのテクノロジーを世界に向けて開放し、誰でも用いることができるテクノロジーという...
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