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「個別の判断能力」を高めなければ、いい戦略でも失敗する

営業から考える企業戦略(3)個別の判断力をいかに高めるか

田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表
概要・テキスト
企業の戦略が正しいのに、結果として失敗している会社は数多くある。それは、「個別の判断力」に起因する。正しい戦略と個別の判断は違うものだと田村氏は言う。では個別の判断力を高めるにはどうしたらいいのか。また、本社勤務が続くと失われてしまいがちな「現場感覚」をいかにして補い、維持し続ければいいのか。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:14
収録日:2020/09/25
追加日:2021/07/26
≪全文≫

●「正しい戦略と個別の判断力は違うものだ」


田村 よくわれわれは、「いい戦略をつくれ、そうすれば勝てる」と言われました。ですが、家電メーカーとかいろいろな会社と見ていると、実は、戦略は正しくても失敗している会社は山のようにあります。

―― それは、どういうことですか。

田村 例えば、ある超有名な電機メーカーが数十年前に、先進的な戦略(ビジョン)をつくりました。今でも通用するビジョンです。ですが、それが全くの失敗に終わりました。

 ビジョンを実現するためには、たくさんの「個々の判断」があります。人をどうするか、組織をどうするか、このタイミングでこういう投資をすべきかどうか、などがたくさんある。この個別の判断で失敗しているのです。そのために、その戦略、ビジョンを実現できずにいるのです。

 「正しい戦略と個別の判断は違うものだ」と考えたほうがいいですね。「個別の判断能力」は非常に大事です。これがあると、正しい戦略もつくることができるようになる。この個別の判断能力が、キリンビールにおいて高まりました。これを導いたのが、営業の現場なのです。お客様のために何かをやる。それをお客様に共感してもらう。その結果を受けて、(キリンビールの社員たちが)奮い立ってくる。

 ここで、「お客様のために」と言っても、言葉はきれいですが、日々迷うことばかりです。

―― そうですね。

田村 なぜなら、ある人間は「安売りしたらお客様に喜んでもらえる」と言い、またある人間は「景品を付けたほうがいい」と言う。これは、明らかにその通りです。しかし一方では、そのようなことやり続けて、本当にお客様のためになるのかという議論になる。

 この過程で、さまざまな議論が社内でありました。高知支店でも、四国地区でもあった。この議論がものすごく大事でした。そこで、「このように考えたらいい」といった社員の考え方が磨かれてくる。そうして、いろいろな判断力が高まってくるのです。

 それを行動に移すことによって、お客様の反応が分かる。そうしていると、「こういうことやったらうまくいく」「失敗する」と分かってくる。そういった中で、個別の判断力が高まってきました。そうすると、打つ手、打つ手が全て成功するようになったのです。

―― 当然、会議はいろいろな会社が山ほど年中やっていますが、個別の判断力が磨かれることに...
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