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なぜウクライナに侵攻?弱小国を狙ってきたロシアの歴史

歴史から考える「ロシアの戦略」(1)ロシアの基本戦略と行動

山添博史
防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長
概要・テキスト
ロシアの行動を予見するためには、ロシアの歴史をひもとき、その行動パターンや基本戦略を知っておくことが重要である。ロシアの歴史を振り返ると、実はこれまでターゲットにしてきたのは強国・大国ではなく、弱小国であることが見えてくる。そして、その背景には、ロシアが18世紀まで草原の遊牧民からも荒らされるような弱みもあった国であったこともあるのだ。本講義では現在、ロシアの侵略行動に対して国際秩序がどのような危機に直面しているかを確認するとともに、ロシアの歴史的な基本戦略とその行動について解説する。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:30
収録日:2024/01/18
追加日:2024/02/19
カテゴリー:
≪全文≫

●ロシアの行いがもたらした国際秩序の危機


―― 皆さま、こんにちは。本日は山添博史先生に「歴史から考えるロシアの戦略」というテーマでお話を伺いたいと思っております。山添先生、どうぞよろしくお願いいたします。

山添 よろしくお願いします。

―― ある国がどう動いていくのか、どういう戦略を取っていくのかということを考えるときに、その国の歴史から考えるということが非常に重要だと思うのですけれど、この講義では、まさにロシアという国がどういう戦略をこれまで取ってきていて、今後それがどう影響しそうなのかということを、ぜひお聴きできればと思っております。


―― 最初に、今のロシアの置かれた場所(立場)といいますか、ちょうどウクライナ侵略もございまして、それを経たロシアというのはどういう状況かということを概括してお聞きしたいと思っています。

山添 国際秩序の中で、これほど外れた行動に出ているというのは、私が見ている200~300年の歴史の中でもなかなか事例が見出しにくいことです。

 それによって、要するに、例えば100年~200年前だったらみんながやっていたような帝国主義を、今の時代にやっているといわれているのがロシアの非難されている大きな原因であるわけなのです。

―― そこでいうところの帝国主義というのは、いわゆる他国の主権を平気で踏みにじって、例えば領土を拡張するというイメージですか。

山添 はい。そうですね。軍事進攻というのは、いろいろな種類があるのですけれど、1945年以降に、国境線を変えて自国の領土を増やす、そのために主権国家の主権や対等性を認めずに、客観的には確認できないウクライナがナチ政権だということを主張して軍を首都に攻めていく、そういうやり方をやっています。それは、帝国的にウクライナを支配するという願望に基づいているといわれるわけなのです。

―― このようなロシアの行動によって、ある意味では、まさに帝国主義的な行動を取らないという、戦後一貫して続いてきたような国際秩序が弱体化しているというのが、先生の見立てということでございますね。

山添 はい。このまま進んでいくのであれば、ロシアが帝国主義的なことをやっていることによって、ウクライナという国の主権が損なわれ、人権侵害が大規模に行われていく。それが許容される時代に...
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