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全面戦争はできない!?戦後のソ連の思惑と米ソ軍備拡張競争

歴史から考える「ロシアの戦略」(4)ソ連の極東戦略と戦後の米ソ対立

山添博史
防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長
概要・テキスト
ソ連の基本戦略は強国との対決を避けることである。強国の中でソ連にとって最大の敵はアメリカである。では第2次世界大戦から戦後にかけてソ連はどのような動きをしていたのか。その流れを追いながら、自国維持のためにアメリカとの直接対決を避けようとしたソ連の思惑と戦略を解説していく。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:57
収録日:2024/01/18
追加日:2024/03/11
カテゴリー:
≪全文≫

●日本軍を警戒するソ連の極東戦略


―― そのような形で実際にヨーロッパ方面では独ソ戦が始まるまでの状況ができてくるということですけれど、極東のほうはどうなっていくのですか。

山添 極東のほうは、基本的にはまだまだ弱いというのがソ連の立場です。なので、ドイツに対して備えていくことのほうがもっと大事であるわけで、最初から日本と戦っていくという考えではないのです。

 むしろ満州事変が起こった頃、満州全域に日本の関東軍が出てくるようになってきた場合、ソ連が権益を持っていた北の満州鉄道が日本の力に直面して奪われる前に売却したほうがいいということで、力のある日本に売却するということを行います。

 その後は、ソ連極東領土とモンゴルの防衛です。極東は人口が少ないですし、産業も力を入れていかないといけないので、ここでも防衛的に準備をしていく。工業化を進めていって戦車をつくっていくということがなんとか急いで間に合ったので、ノモンハンでの衝突が1939年にありますが、モンゴルと満州の国境で、モンゴル軍との連合軍ですけれどソ連軍はなんとか勝つことができたということです。

 ですから、そこから後も関東軍がソ連領に攻めてくるのではないかということを恐れる側であったのです。

―― 昭和史に少しお詳しい方ですと、例えば「ゾルゲ事件」ですとか、日本が北に行くのか南に行くのかというところでいろんな工作を仕掛けてくるというような話もありますが、そのあたり、ソ連の意識ではどういう位置付けになっているのですか。

山添 ゾルゲで一番期待されていた情報は、日本が北に攻めてくるのかの判断材料ですね。日本陸軍はかつても実際にシベリア出兵とか、そういうときに大幅にロシア領内に侵攻していったこともあったわけですから、当時もまた攻撃してくるかもしれないとソ連は考えた。日本にそういう兆候があったら、その意思や力を把握しておくということがゾルゲに求められていたわけなのです。やはり極東領土を守っておくということが一番大きな動機です。

―― それは、当時の日本がソ連としてはなかなか手が出せる相手ではなく、むしろ実力としては手が出せないので工作等を仕掛けていくというような感じですか。

山添 そうですね。それでもし状況が許せば侵攻するというように、機会があれば日本軍を叩...
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