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「ハード・ブレグジット」への道は長く険しい

2017年世界と日本(2)BREXITとEUの激動(前編)

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
メイ首相(右)
トランプ勝利同様、イギリス国民が決断したブレグジットもまた世界の予想に反していた。なぜ国民投票は行われ、採択の決め手はどこにあったのか。また、この先のブレグジット実行への道のりはどうなるのか。(2017年1月24日開催島田塾第142回勉強会島田晴雄会長講演「2017年 年頭所感」より、全11話中第3話)
時間:08:37
収録日:2017/01/24
追加日:2017/05/02
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜイギリスはブレグジットを国民投票に委ねたのか


 ここからはブレグジットと欧州(EU)の激動について語ります。ブレグジットはショックでした。2016年6月23日、欧州のみならず全世界が見守る中で開票してみると、大方の予想に反してブレグジット派が僅差で勝利。51.9パーセント対48.1パーセントだったのですね。

 なぜ国民投票などをしたのか? 国民投票は最近では鬼門です。最近、民主主義ではそんなことはできないのではないのか? と思うほどです。とにかくキャメロン氏は、2013年の時点で、「2015年の総選挙で保守党が勝てば、2017年中に国民投票を実行する」という約束をしていました。

 当時の英国は不況で、EU元凶論が高まっていました。もちろんキャメロン氏は頭を悩ませましたが、一番気がかりなのは、英国独立党(Independence Party)の急速な台頭でした。ナイジェル・ファラージ氏というかなりユニークな人を党首に、当時躍進した政党です。2014年の全国得票率は27パーセント、なんと労働党・保守党を抜いて1位になったのです。

 一方、保守党の内部は意見の対立が激化して、今にも分裂しそうな状態です。党首のキャメロン氏としては、外からはファラージ氏の脅威があり、内側は割れている状態で、非常に困惑しました。そこで、国民の目を外にそらすには「EUをどうするのか」という国民投票だと決めます。先例として1975年、当時労働党のウィルソン党首が困ったときに、ECに残留するか否かの国民投票を行って圧勝した例があったので、使える手だと思ったのでしょう。


●英国民にとってのブレグジットと大英帝国の残照


 イギリス国民は、EUをどのように思っているのか。英国の主権が侵食される。移民が入ってくる。社会保障、環境規制がうるさい。原発抑制で高い電力を買わされる。しかも、EUの会費は1兆円以上と大変高い。それから、EU政府は過度な官僚主義を取っている。ブリュッセルに行けば分かりますが、これはすごいものです。20数カ国を訳さないといけないので、通訳だけで3,000人ぐらいいると言われており、官僚主義の巣窟のような場所です。そういうものから逃れたいという感情は理解できます。イギリスには、EUに批判的な流れがありました。最も批判的だったのがサッチャー首相で、当時のヨーロッパでは彼女とド=ゴール首相がEU批判を展開していました。

 さて、2015年5月の選挙...
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