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松下幸之助から教わった「人間に照らして見る」ことの大事

松下幸之助と人間大事の経営(4)人を育てる

概要・テキスト
自分が正しいと思えば、相手が社長だろうが誰だろうが、かまわず率直に意見する。そのような人を可愛がり、育てることも、名伯楽として「上に立つ者」の度量といえるのではないだろうか。松下幸之助は人材を見つけると、たとえやんちゃな面があっても、根気をもって育てていくところがあった。(全7話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:34
収録日:2019/08/20
追加日:2020/07/19
≪全文≫

●人間に照らして、違うことは違うと言う


── 普通のサラリーマンだったら、偉そうな人には何も言わないでしょう。それに対して江口さんは、松下幸之助に対してもそうですし、比較的歳が近い、生意気ざかりの御曹司のような人に対してもバシッとものを言われるのは、すごいことだと思います。

江口 すごいというよりも、私の性格なのです。人間に照らして、合っているか合っていないかを見るように幸之助に教えられていましたから、それと照らして「違うんじゃないの」と思うと、ストレートに言ってしまうほうなんです。

 だから、松下政経塾の卒業生の人たちに対しても「あなた、違っているんじゃないの」と言いますし、幸之助自身に対しても、「それは違いますよ。松下幸之助さんの言っておられることは違いますよ」と言ったことが、再三再四あります。

 後に台湾の李登輝総統(当時)がかわいがってくれたのですが、なぜそうなったかというと、私が自分の思っていることをどんどん言ってしまうからです。秘書からは「江口先生は総統の前で、よくストレートにお話をされますね」と言われました。「どういうことですか」と聞くと、「日本から来るほとんど全てのお客様は、総統と話すと、ただ『はい、分かりました』とだけ返事して帰っていかれる。そのなかで、江口先生は珍しい方です」と言われたことがあります。


●なぜ松下幸之助と李登輝は江口氏のことを「面白がった」のか


── だから李登輝元総統は、江口さんのことが大好きだったのですね。

江口 李登輝元総統も松下幸之助という人も、実際にどうかは別として、正しいと思うことも正しくないと思うことも率直に言ってくれる人を、大事にしたというよりも「面白がった」というのが的確な表現だと思います。

 私がポンポン言うことに対して、松下幸之助は「こいつ、面白いやつだ」と。台湾の李登輝元総統も、私が「総統、それは違いますよ。私はこういうふうに思います」と言うことについて、面白く思ったというところではないですかね。

── 江口さんは、全部自分の頭でものを考えて、自分なりの意見を組み立てることができたから、幸之助にもちゃんとものを言えた。李登輝元総統だろうと誰だろうと、ちゃんと相手にものを言うことができた。

 そういうところに接して、幸之助はかなり早い段階で、「この人は経営者人材だ」と見抜いたのでしょ...
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