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新型うつ、発達障害…「仕事」や「コミュ力」にも寛容性を

メンタルヘルスの現在地とこれから(5)新型うつと発達障害

斎藤環
精神科医/筑波大学名誉教授
概要・テキスト
近年、増えているといわれる「新型うつ」や「発達障害」について、どう考えればいいのか。「コミュ力」が高い人が偉いという社会的風潮が蔓延する中、そうでない人が相対的に目立ってしまい偏見を持たれることがあるのだが、そうしたときに大事なこととして「合理的配慮」という考え方を取り上げる斎藤氏。より深刻化した場合の対応とともに解説を進める。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:06
収録日:2024/04/17
追加日:2024/07/13
≪全文≫

●「遊びか、仕事か」という二分法で考えない――新型うつ病への理解


―― (前回の)お話にちょうど出てきましたが、上司の世代の方々にとって非常に分かりづらいのは、おそらく先生がおっしゃった「新型うつ」や「発達障害」ですね。どういうふうに考えればよろしいのでしょうか。

斎藤 そうですね。うつ病というと、かつては本当に「もともと真面目で、責任感が強い人」が倒れてしまって、何もできない。「家でずっと寝ています」という状況の人が主流でした。ところが、最近の「うつ」はもっと軽症化していて、もともとそれほど真面目ではない社員が、ちょっとしたことで倒れてしまう。あとで聞いてみたら、休職期間中に海外旅行に行っていたとか、そういう話を聞くと、「そんなうつがあるか」となって、腹が立つわけです。

 実は精神医学内でも新型うつに対する批判は結構ありました。確かに、従来の「うつ」からするとちょっと様相が違うというのは分かります。真面目で几帳面な人が「うつ」になってしまうのは同情できるけれど、そうでもない人が病気になって、しかも休職中に遊んでいるなんて許せないという気持ちは分からなくはないのです。

 ただ、こういった場合も考え方一つで、要するに負荷が強い仕事はできないけれど、比較的負荷がかからない遊びはできるというのは、決して悪いことではないと考えていただきたいのです。多分遊びの延長線上に仕事もあるだろうと考えられれば、「家で寝たきりでないからけしからん」という発想は別に取らなくてもいい、と私は思っています。

 そういうふうに、かつての考え方に囚われず、今の軽症化しつつある病の状況を踏まえた上で、「仕事か、遊びか」ではなく、遊びも含めて社会参加と考えていただく。社会参加が進んでいるから、これはこれでよしというぐらいの寛容性を持っていただければ、と思っています。

―― 先ほど先生から「リワーク」という言葉もありましたが、遊べるのだったら、リワークも少しは楽なものになるでしょうというぐらいに思っていたほうがよろしいということでしょうか。

斎藤 そうです。段階的に捉える。仕事というものに最重度のストレスがあるとして、その手前にリワークがあり、さらにその手前に遊びがあるような感じで、段階的にステップアップしていくと考えればいいわけです。「遊びか、仕事か」という二分法で考える必要はないと...
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