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現場の本音でわかるハラスメントの実態とリーダーの行動

ハラスメント防止に向けた風土づくり(3)心理的安全性の欠如で起こった事例

青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事
概要・テキスト
ハラスメントの具体的な事例を見ると、周囲が声をかけたり話を聞いたりしていれば解決したかもれないと思うケースが多い。当事者の周辺が意見をしたり、注意を促したりできない職場は、心理的安全性が欠けているといえるのではないだろうか。今回は心理的安全性の欠如で起こった二つの異なる事例を参考に、ハラスメントの防止に向け、ハラスメントを引き起こす人間の行動や心理について考えていく。(全5話中第3話)
時間:06:42
収録日:2023/02/03
追加日:2023/08/27
≪全文≫

●スーパーマン上司のパワハラで自死を選んだ新入社員の事例


 近年、私のところにも実は心理的安全性をテーマとする講義や講演(の依頼)が増えています。そこにはハラスメントを防止したいとか、不安全行動やよくない行動を改善していきたいといったところがあると思います。

 いくつか事例をご紹介したいと思います。一つ目は、ハラスメントの事案が発生してしまったメーカーの事例です。この会社ではやはり心理的安全性が非常に欠如していたのではないかと思います。どんな事案だったのかというと、ある新入社員の方が上司の方にハラスメントを受けて、いわゆる自死をしてしまったという事案になっています。

 この時、われわれも当事者の上司の方やメンバーの方々からヒアリングをさせていただきました。「非常に突然のことなので、本当に理由も何も分からない。(係長は)部下のことを非常に思って厳しく指導をしていたけれど、こんなことになるとは思わなかった」というのが課長の声です。

 一方、メンバーの声によると、「こうしたハラスメントが行き過ぎであることは、実は現場ではみんなが分かっていた。ただし、(係長は)非常にスーパーマンで仕事もできるので、現場が回らないことも分かっていた。そのため、上の方から厳しく指導することは、なかなかできなかった」と。現場からしてみると、ハラスメントや指導が行き過ぎであることは分かっていたけれども、やはり言えなかったということで、そうしたことが現場の声として聞こえています。

 皆さん、このような事態になるとは思わず、もしもこの方が自死するということが分かっていれば、きっと(何か)言ったかもしれないと思うのですが、そのような予測はできなかった。そのような中、自分の利益や保身に走ることは誰しもあるだろうと思いますが、仮にこの組織の中に心理的安全性があったとすれば、このような痛ましい事件・事故にはつながらなかったのではないかと、思える一つの事案でした。


●1割の従業員が休職してしまった工場の事例


 もう一つは、1割(の従業員)が休職してしまった部品メーカー工場の事例です。状況としては、コロナになって受注が拡大したが、人は増えていないまま、工場の稼働率が高くなり、そんな中で生産量が増えていった...
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